第2話







「……ん?」



最初、真剣な顔して言われた意味が解らなかった。

木が好き。

…俺も嫌いじゃないけど?

特に好きでもないけど、理解出来ない訳では無い。

驚くことでも無い。


風流だな…と思ったくらいだった。

でも、違った。

全然違う。意味が違う。

俺の考えが、甘かった。



「中橋は、女の子が好きだろ?」


「……うん」



俺の名前を読んで、俺の目を見て、そう尋ねてくる彼。


違うけど。

俺が好きなのは、男であるお前だけど。

でも言える訳がなかったから、頷いた。

表情が崩れそうになるのを堪えて、続きを促す。







「…俺は、それと同じ気持ちで、木が好き」







「……え…?…」



何かが消えた気がした。


白くなって濁って、消えた。

何かとは、なんだ?

…自分でも、解らない。



でも。

確かに自分の中に、空洞を感じた。

空っぽ。何も無い。






――そこにあったのは、何だ?






「……引いた?」


「…え、あ…」


「…お願い…。気持ち悪がらないでくれ…」



お願い?


そんなの…狡い。

結城、お前は狡いよ…。

泣きそうな顔して、縋ってきて。

そんなの







「気持ち悪くないよ…」


「…え?」


「それでも、結城は結城だ」


「中橋…ありがと…」



突き放せる訳ない。

大好きな人。ずっと見てきた。

傷つけたくない。



弱々しく笑うその顔に、締め付けられる自分の心臓が、忌々しい。


俺を見てくれないかな。

少しだけでも良いから。

そう思ってたけど…もう無理だと解った。



結城の恋愛対象は、人じゃない。

喋りもしない、樹木だ。





何でこんな奴を、好きになってしまったんだろう。







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