第3話





俺の恋人の明人は、吹奏楽部員で。

俺が入部していた時も、その部活にいた。

最初は、名前も知らなかったんだけど。

ある日の合奏の時。




――――――――――――――――










「この…っ、turmpet!下手くそ!このど下手が!もっと飛ばして来い!全然吹けてねーじゃねーか!」


「はい!」



いつ聞いてもコーチの怒声には、慣れない。

特にメロディーへの厳しさは、尋常じゃなかった。


俺、打楽器で良かったなぁ…と心底思う。

あんな事を言われたら、心が折れそうだ。

生温い環境で育ってきた俺には、到底耐えられないだろうな…と、始めから諦めている。



「tuba、62小節目にもっと息を深く入れて」






「はい!」







俺は、息が止まった。


始めて明人の声を、聞いた瞬間。

背筋が、ぞくっとした。



もう、彼しか見えなくて。

もう一度、その声で音を発してほしい。

そんな事ばかりが、頭の中を支配していた。



明人の声は今まで聞いた中で、一番好みの声だった。







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