鍵穴
漣_ren
鍵穴を覗くと、
僕の部屋の壁には開かない扉が一つある。
昔ながらの磨りガラスは、外の景色を霞んで映す窓になっているんだけど、その扉にはドアノブと鍵穴までついているんだ。
「あの扉の鍵?そんなもの家が建った時から無いよ?ただの飾りさ。あの扉もね」
ってパパが言っていた。
だけど、僕はそれだけじゃないって事を知ってる。
今日だけ、特別に君達に教えてあげるよ。
鍵穴を覗くと、外の景色が見えると思うだろ?
でも、外は見えないんだ。
じゃあどこがみえるんだって?
そんなに焦るなよ。すぐ教えるから…さ?
なんだかどこかわからない場所が見えるんだよね。
そう、それで「そこ」は、覗くたびに色を変えるんだ。
どこか遠い世界の街並み。
ただただ広い空。
それは明るい朝だったり、
はたまた夜だったり。
春、夏、秋、冬、どの季節の時だってある。
まるで時間を旅行しているようなんだ!
ただ風景が見えるだけじゃあないんだ。
たまに動物が居たり、
人間が座ってなにか作業していたりもする。
ごくごく稀に全く見たことのないような生物が居たりするよ。
妖精のような美しい姿だったり獣のようでそうでないような姿だったりとにかく幻想的で気味の悪いのもいるんだ。
今日は…っと、あっ!みてみて!ほら、見たことないようなのが動いてる。
こういうのを見てる時っていつもワクワクするんだよね。
鱗があるね。爬虫類みたいだね。
え?あっちに気付かれないのかって?
気付かれたことなんかないから大丈夫だよ!
あれ?でも今日は何か…。
あっ!目が合った。
こっちに歩いてくる!
でも大丈夫だよ!初めて気付かれたけどこの扉は開かないんだ。
アイツ、何か言ってるね!
何言ってるのか分かんないよね。
何かすごい怒ってるみたいだけど大丈夫だよね。
ガチャッ…。
僕らは今日もどこかの鍵穴から視線を感じて過ごしているよ。
鍵穴 漣_ren @ren_sazanami
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます