普段はにぎやかで楽しい、行く度にワクワクするパワフルな街——中華街。
そんな街に雨が降ると、景色は一変。
香港路に九龍城……不思議な魔境への誘いに、うっかり足を踏み入れてしまったか!?(こんな想像したのは、私だけかも知れませんが……)
ゾクゾクしながら読み進めると、切なくハートフルな物語で、ジーンとしていました。
横浜は二つめの故郷——
日本と、日本の友人を思う外国人美雨さんの言葉は、どれも感動的です。
人との大切なつながりは、思い出の場所等を通して、淋しさから懐かしさへと変わっていくのかも知れません。
次に食べるアサリそばは、きっと、また違う味になっているのでしょう。
この物語を読んでいて、そんなことを考えました。
横浜中華街を舞台にしたショート・ストーリー。
「街コン」参加作品ということで、「こんな良い風景が観えますよ」とか「こんな美味なる食べ物がありますよ」などの宣伝物語なのだろうと、物語を読み進めました。街を薦めるならそれが常套ですから。
違和感を最初に覚えたのは、“ 晴れの日 ” ではなく “ 雨の日 ” であったこと。なぜ雨が舞台設定で必要なのかしら、とさらに進みます。「アッ、そういうことね!」と思わず溜飲が下がったのは後半のシーンです。こういう仕掛けが用意されていたのかと、ため息交じりに納得いたしました。
街には変わらない佇まいがあります。でもいつまでもそのままってことはあり得ません。特に繁華街などは顕著でしょう。その中で変わらない、あの頃のままの “ 人 ” に出会ったら、それは変わらない景観以上の喜びを感じるのではないでしょうか。
無機物で造られた街を懐かしむのは、そこに住まう人がいるからこそ。そんな思いを感じさせてくれる、珠玉の作品です。
あさりソバ、食べてみたい……