そこにあるのは、なによりも先ず『生』への渇望。

学校全体での異世界転移ですが、主人公がもらう女神さま最後の援助が肝(キモ)。パニックからの困惑、とっさの冷静、行き過ぎ、横道に脱線と、登場人物たちは必死な割に、いかにも中学生~高校生らしく未熟なまま突き進んで行くようです。


強者が羽振りを利かせる世界で、そうそう元の世界の「甘さ」から切り替えが出来る訳もなく、死体の山を前に誰も彼もが右往左往する中で、主人公のやや歪んだ実直さが妹やその友人・部活仲間たちを救い、必然そのリーダーとならざるを得ません。

「生存」に特化する容赦のない言葉を吐く主人公は、その合理性や冷徹、実利的判断を認められていくのですが、優しさがないわけでもなく、自らに課した「規律(じぶんるーる)」を胸に仲間を守っていくのです。

チートでハーレムな展開に雪崩込むのも仕方ありません。
下心を隠さず、空気読まないセクハラ失言をしては妹らに睨まれたり、怜悧で計算高い言動で時に周囲を庇う主人公の気遣いが、ハードモードの異世界生活を少しだけ息をつけるものにしています。

総じて登場人物たち個人の未熟さが、いささか以上に過激さを噴き出すこの物語にとっての、(生々しい血肉描写以上に)ある意味「リアルさ」なのかも知れません。


オークら魔物群が溢れる初期拠点から、生き残りを賭けた脱出をどのように成し遂げていくのか、まだまだ予断を許さない状況です。

リズム良く読み進められる文章も相まって、この物語にはいつの間にか先を楽しみにしている不思議な快感があるように思います。

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