第4話
喫茶店『リバース』。
裏通りと呼ばれるホテルやいかがわしい店が多い通りで浮いている喫茶店だ。
主に茉莉那のような援交少女、それから出会い系サイトの待ち合わせで使われることが多くてちょび髭が似合う店の
————————————夕方5時10分
リバースには茉莉那と主人しか居なかった。というのも裏通りがしっかりと動き出すのは夜8持以降だ。この喫茶店も例外でない。
落ち着いた雰囲気の喫茶店は12歳からこうして暮らす、いや、暮らしている事にしている茉莉那の心を癒す。
あと、20分。今回の相手がどんな人か考えるのに集中してしまい本の内容が頭に入ってこない。
いつも通りのハゲ爺では無い、と茉莉那は思った。文の書き方などからして、40代にも満たないんじゃないかというのが結論である。
どうせそんな考えも裏切られるんだろう、とその結論自体を信じていない茉莉那は卑屈になっていたが。
——————————夕方5持20分
リバースには相変わらず茉莉那と主人しか居ない。
主人が毎日のように違う男と待ち合わせている茉莉那を心配したのか、ただのサービスか。オレンジジュースを出してきた。
茉莉那は主人のちょび髭を見ると笑いそうになる。
「どうぞ、サービスのオレンジジュースです」
「あ、ありがとう」
茉莉那はオレンジジュースを飲みながらYahoo!ニュースを見る。が、ニュースに【中高生の援助交際数 過去最大】と、茉莉那にとっては不快極まりない”取り締まる側”による記事があった事から嫌気がさして乱暴にガラケーをたたんだ。また、その衝撃でラインストーンがひとつ落下した。
拾う気は無かった。もう4分の1近いラインストーンが無くなっているからもう良い、というのが茉莉那の本音だ。
と、その時。
入店ベルが鳴った。あいにく、茉莉那の居る場所から入り口は見えない。逆も然りだ。
『着いたよ! 入り口に近い席で待ってる』
メールを打つのが早いのか、それとも常連でテンプレが用意されているのか。すぐにメールが来た。
茉莉那は迷った末、返信をしてからその客の席にいく事にした。
『今から行きますね! 待っててください(笑)』
そして、柱の後ろの席から立ち上がって入り口の方に行きかけた茉莉那の目に映った客は、予想外の人間だった。
向こうがまだ気が付いていないように見えるのを良いことにまた元の席に座りこんだ。
けれど、客は一瞬だけ出てきた茉莉那に気が付いてゆっくりと茉莉那の居る席までやってきて言った。
「光川サツキさん……………………いや、佐野さん……」
光川サツキ、茉莉那の援交時の名前を呼び、本来なら知らないはずの佐野という苗字を呼んだ咲坂秀慶高等学校の制服に身を包んだ少年は、苦笑いしながら茉莉那の前の席に腰を下ろした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます