変人しか気にしないから普通は書かれない部分が気になる変人にオススメ

 例えば二次元の女子高生が突然受肉して主人公と一緒に暮らすラブコメがあったとしたら、「少女には戸籍がないはずだが、どうするのだろう?」といった変人しか気にしない部分は普通書かれない。なぜならどこにでもいる、ありふれた人物がベースの主人公なら少女に戸籍がないことよりも先に気にすることは沢山あるし、それは普通の読者にとっても同じだからだ。
 しかしこの作品の主人公達は普通ではない。「いや、異世界の物理法則を確認するのは普通だろ」と自分は変人側だと認めたがらない読者もいるだろうが、この作品の主人公達は間違いなく変人達だ。そしてそれが同じ変人側の読者にとっては読んでいて、かゆいところに手が届くような心地よさがある。
 変人しか楽しめないかといえば、そんなことはない。変人要素は脇道ではなくしっかりと本筋の上に乗っており、物語は停滞することなく進み続ける。普通の読者が読んでもコメディとして十分に楽しめるだろう。
 今作、後半少し変人要素が減っているように思えた。全体の半分以上が魔術の仕組みを研究するだけの小説を嬉々として読む自分には少々物足りなさを感じなくもない。普通と変人の両方楽しめるバランスを考えればこれくらいが無難なのだろう。それは分かる。ただ、普通に読んでも十分に面白い話ではあるが、自分が一番に読みたい部分は高専生という変人達の視点を通して語られる「そこサラッと流す人多いけど、やっぱり気になるよね」という部分なので、そういった部分がほとんどない普通の異世界転移モノになっていかないよう、二巻も頑張って欲しい。