後編

 友人が『彼女カノジョ』になってから一年後。

 晴れて一人暮らしの大学生活が始まった。


 彼女カノジョと二人だけの時間、お喋りをする時間、遊ぶ時間。それらすべてに時間を割くことが多くなった。親の監視から解放されて、なにをしてもなにも言われない自分ふたりだけの城を手に入れたのだ。


「良かったね。ここはなにも禁止されていない。自分のために時間を使える。漫画だってアニメだってタルパだってやりたい放題ってわけだ」


 引っ越しの荷物も片付け終え、大学生活も慣れてきたころ。

 複数の講義から課題がどっと出たり、アルバイトの出勤時間が伸びたりで急に忙しくなった。いつもならアパートの自室に着くと日課である趣味タルパを始めるのだが、疲れて動けなかった。

 明日までの課題もまだ終わってない。なのに、そのまま倒れて寝てしまった。

 翌日、くつくつと鍋が吹きこぼす音で目が覚めた。慌ててガスを止めたが、この鍋はなんだろう。香りから味噌汁であることは間違いないが、作った記憶がなかった。


「ああ、火を止めてくれてありがとう」


 振りむくと、エプロン姿の彼女カノジョが食卓に食器を並べていた。皿の上にはベーコンとスクランブルエッグとトマトのサンドイッチトースト。それに牛乳が添えられている。


「随分疲れているようだったのでな。寝ている間にやらせてもらった。朝食は作らせてもらった。あと、今日までの課題も半分くらいやっておいた。あなたが頑張れば提出時刻までには間に合うだろう。……どうした? これも彼女カノジョの務めだろう?」


 確認すると、課題は六割ほど出来上がっていた。目の前の料理も簡単なものではあるが、美味しく腹を満たせられた。

 彼女カノジョは自由奔放で好き勝手している部分もあるが、今回のは今までと決定的に違かった点があった。


 


 彼女曰く、空想の友人イマジナリーフレンドじゃなくなり、本当の友人、そして『彼女カノジョ』になった。でも、それは決して現実になったわけではない。


「ああ、これかい? 寝ている間にあなたの肉体カラダを借りたんだ」


 ボク彼女カノジョの言葉でとあることを思い出した。

 イマジナリーフレンドについて調べたとき、解離性同一性障害――俗にいう多重人格と似た症状が現れることがあるという記述があったのだ。


「えっと……だめ、だったか?」


 今になって自分がしたことが悪いことだったんじゃないかと思ったのか、彼女カノジョは所在無さそうに俯く。


 思わず喉から潰れた笑い声が出た。

 彼女カノジョのことをもっと知りたくなって、しかたなかった。


 この日を境に、ボク趣味タルパは一層本格化した。




  …




 夜も更けて、人の喧騒が消えるころ。

 本日の講義とアルバイトをやっと終わらせた僕は、マンションの自室に向かっていた。その途中、「あ、おかえりなさい」と声をかけられた。

 振り向くと、ドアから出たところの黒髪ストレートの女性がコチラに手を振っていた。


 女性の名前は神岸かみぎし小夜さや

 大学の同期生……というより高校の同級生で三年生のときはクラスメイトだった。けど、親しいわけじゃない。こちらから話しかけたことがないくらいだった。


 きっかけは大学の入学式の日、向こうから声をかけてきたのだ。


「こんにちは。あなたもこの大学だったんだね。……こうやって話すのは初めて、かな? 高校のころ同じクラスだったんだけど、覚えてる?」

 覚えてるもなにも、席替えで一度だけ、神岸小夜とは隣同士になったことがある。忘れたふりをするほど薄情でもなかった。

「あー良かった。実はちょっと怖かったんだよね。やっぱり、こういう初めてって慣れなくて。でも、知ってる人と話したら、緊張もかなり和らいだ気がする。これからの学生生活、よろしくね」


 神岸小夜との関係はこれだけ。目が合えば今のように挨拶してくる、友人にも満たない関係。知り合いという名の社交辞令。ただそれだけだ。


 ボクは軽くお辞儀あいさつをする。

 他人との会話に苦手意識がある人間として言わせてもらうと、神岸小夜は恐怖だった。明るい印象なのにどこか落ち着いていて、柔軟な話題を振ってくる。


 得体の知れないものなのにいつも背中を預けている、錯覚のような居心地。されど、恐怖なのには変わりない。

 親しみやすく、居心地のいい、恐怖。


 いつもなら『彼女カノジョ』が会話のアシストしてくれる……のだが、なんとも間の悪いことに、今は周りにはいない。

 マンションに入ったときに「サプライズがあるから、楽しみにして帰ってきてくれたまえ」と言って、一足先に帰ってしまったのだ。


 遅くに帰ってきたことを心配そうにする神岸小夜だったが、僕は曖昧な相槌を打つだけ打ってそそくさと自室おとなりへ逃げた。


 ボクはため息を吐く。

 彼女カノジョがいなければボク他人だれかとの会話すらままならない。

 けれど、彼女カノジョがいれば、彼女カノジョさえいれば、ボクはなんだってできる。会話はもちろん、外出デートすることだってできるし、二人ひとり暮らしもできるし、大学入試にだって合格カンニングできる。

 彼女カノジョはなんでもできる。彼女カノジョとならなんだって。


『 アナタ     ダレ? 』


 彼女カノジョはすでに容姿や言動、性別すらも超越している。その日の気分で自由自在な格好コスプレを楽しんでいたのだ。


 『サプライズ』と称したこの日の格好コスプレは……。


「「おかえりなさい、下僕」」


 ゴスロリファッションの双子カノジョだった。左右に振り分けられたステレオ音声が僕の両耳をくすぐる。先日一緒に見たアニメで、ボクが「(衣装が)かわいいなぁ」とつぶやいたキャラクターだった。

 彼女カノジョ双子ふたつに分かれているのはこのとき初めて見たが、驚くこともなく、むしろ安心した。「そういうのも有りか」と思う程度のことだった。

 しかしながら、趣味タルパの幅が広がる発見でもあった。


 今回のことを参考にして、ボクはいろんな『彼女カノジョ』を創ることにした。


 より現実リアルに、より可能性を見出す方法を模索した。


 創れる人数は最大で九人。けれど、維持できるのは六人までが限界だった。さすがに精神や集中力が保てないようだ。

 目に入る範囲でなら大きさや質感はかなり自由が利く。

 環境シチュエーションすらも変えることができる。自室でありながら、波音を攫われながら水着の彼女たちとビーチバレーという常夏の気分を味わうことだってできるし、時間跳躍だって可能だ。


 彼女タルパは無限の可能性が秘めていることを実感する。


  ア

  ナ ダ

 タ  

   ? 

     』


 そして、さまざまな『彼女カノジョ』を創ったが、言えることが一つある。


 ボク彼女カノジョが好きだ。

 容姿ハード性格ソフトの話ではない。それは彼女の持つ一つの属性スペックでしかない。彼女の性質、……『魂』とでも呼べばいいだろうか。ボクはそれが好きだった。

 カノジョを受け止めたい。

 これは願望ではなく、すでに義務だ。

 だから、どんなにいても、どんな属性ステータスを付与しても、彼女はボクのカノジョなのである。





  …


『ねぇ、あなた……だれ?』


『ねぇ』

   『ねぇ』

      『ねぇ』


        『 ねぇ?』


『あなた』『あなたは』『あなた』

『あなた』『あなたは』『あなた』

『あなた』『あなたは』『あなた』


『?』『だ』『れ』『?』『だ』『れ』『?』『だ』『れ』『?』『だ』『れ』『?』『だ』『れ』『?』『だ』『れ』『?』『だ』『れ』『?』『だ』『れ』『?』『だ』『れ』『?』『だ』『れ』『?』『だ』『れ』『?』『だ』『れ』『?』『だ』『れ』『?』『だ』『れ』『?』『だ』『れ』『?』『だ』『れ』


『…?、…?。…?』『…!、…!。…!』

『…!、…!。…!』『…?、…?。…?』

『…?、…?。…?』『…!、…!。…!』


『ねぇ』

   『ね ぇ』

      『ね ぇ 』



        『 ね ぇ ?  』





『ボクハ、


  ダレ?』


・…‥・‥・ …・‥ … …・… ‥

        … …‥・… ・… ‥・…  …… …‥・… ・… ‥・…  …… …‥・… ・… ‥・…  …

           … ‥・… ・… …・…‥・‥・・… ‥・… ・… …・…‥・‥・ … ‥・… ・… …・…‥・‥・ 

                 ・‥ ・… ‥ …・‥ … ‥・…‥・‥ ・… ‥ …・‥ … ‥・…‥・‥ ・… ‥ …・‥ … ‥・…‥

 …‥・‥・ …‥ … …・… ‥・……‥・‥・ …‥ … …・… ‥・……‥・‥・ …‥ … …・… ‥・… ―――どうしたの?」


 気がつくと、となりに神岸小夜がいた。その瞳は心配そうにコチラを見つめる。

 ボクは混乱した。


「……あっ、え。え?」

「………話、聞いてなかったでしょ」

「えっと、ご、ごめんな、さい。その、耳の、耳鳴りがひどくて、なんの話……というか、僕はなにをやってたんだっけ?」


 辺りを見渡すと、大学の敷地内だった。グラウンドと校舎の間にあるベンチに僕たちふたりは座っていて、膝に弁当を広げていた。


「ほら、昼食を食べるところだよ。あなたから誘ってきたんだけど、覚えてない?」


 神岸小夜の弁当箱には白米をベースとした和風系の料理が敷き詰められてる。

 コチラの弁当箱にはベーコンとスクランブルエッグとトマトのサンドイッチトースト。それに紙パックの牛乳が添えられている。


 神岸小夜の言った言葉はどうやら事実のようだった。こんな嘘を言ったところでなにもならない。けれど、ボクは食事に誘った覚えがない。


「でも誘ってくれて良かった」

「な、なにが?」

「んー、実は最近顔色が悪かったから心配してて。ちゃんとした食事とってるのかなー、って」


 たしかに最近は疲労が溜まっている感覚があった。顔に出しているつもりはなかったが、いつの間にかに心配をかけていたのか? それとも。


 ボクは心の内を読まれないように表情を忍ばせる。社交辞令だ。神岸小夜のそれは、社交辞令。そう言い聞かせた。


「……そのサンドイッチ美味しそうだね」

「え?」


 眼光を鋭く光らせながら、神岸小夜は言った。


「この香りは……バジルソース! 私、バジル好きなんだ! もし良かったら一口、頂いていいかな?」

「え、あ。だいじょうぶ、だけど……」

「では、一つだけ失礼します」


 神岸小夜はひょいっサンドイッチをつまみ、口に入れる。


「んっ、おいしー! おいしいよ。料理の才能あるんじゃない?」

「さ、サンドイッチなんてだれでも……」

「そんなことないよ? 具材の割合がすごく噛み合ってて………あ、一口貰っちゃったから、今度はあなたが欲しいのあったら、あげるね?」


 弁当箱を傾けて中身を見せる。

 ……もしかして、最初からこのつもりだったのかもしれない。ちゃんと栄養バランスのあるものを食べさせるための、社交辞令いいわけ


「ほら、遠慮せず、何個でも言ってね?」

「……じゃぁ、だし巻き玉子」

「では玉子をあなたに………はい、口開けて?」

「え?」


 神岸小夜は箸で拾いあげた玉子を口元ボクまで運ぶ。


「直接触ったら手が汚れちゃうでしょ?」

「えと、でも……」

「ほら、あーん、だよ。あーんっ。目を閉じて、口を開けるの。できる?」

「っ」


 挑発的な表情でボクを焚きつけてくる。もう言いなりになるしか選択肢がなかった。完全に相手のペースだ。このままじゃどんどん餌付けされてしまう。


「ねぇ」

「な、なに?」


 三つ目のだし巻き玉子が入った口に手を当てながら、僕は返答する。


「今付き合ってる彼女ヒトって、いる?」


 喉が詰まって咽せた。唐突すぎる質問で、理解が追いつかなかった。


「その反応はいないみたい、かな?」

「ごほっ、えっと!」

「じゃあさ、私と付き合ってくれない?」


 喉が詰まってるものを一気に呑みこんだ。


「ダメ、かな?」


 上目遣いの長いまつ毛が挑発してくる。


「だ、だダメっていうか、急過ぎて、そそその……」

「じゃあさ、今週末デートしよ?」


 さっきから喉が開いたり閉まったり、大忙しだ。好きな人を陥落させたければ胃を掴めというが、今の僕は喉を完全に掴まれてる。完全に脅迫だった。


「それで、付き合うかどうか決めて?」


 そう言うと、集合する場所と時刻だけを伝えて、素早く弁当を畳んだ神岸小夜はすぐ去ってしまった。


 しばらく呆然としていた。

 なにが起こった?

 ボクは告白されたのか?

 なぜボクに告白したんだ?

 罰ゲームなのか?

 毒電波に犯されて頭がおかしくなってしまったのか?

 神岸小夜はなにを望んでいる?


 さまざまな思考ボク感情ボクがせめぎあって脳内ボクをごちゃ混ぜにして、パンクさせる。


 どうすればいい?


 意見が欲しい。冷静に分析できる第三者の意見が欲しい。未来の、建設的な話を。『  カノジョ』の意見を。


「あれ?」


 先ほどまで、いや、ずっと一緒にいたはずの  カノジョの姿がない。

 振り向き叫んでも、一向に現れない。

 タルパを試みても、創れない。

 いない。

 どこにもいない。

 消えてしまった。


 ぽつりっ、とボクだけが道端に残されていた。


 ここは、ここはどこだ?

 ボクは、なにをすればいい?



  …



 『  』が消えてから、数日。

 週末が来てしまった。憂鬱ながらも頑張って雑誌知識のコーデを身に纏う。集合場所の駅前に着いたのは約束の三十分前。今日は決戦の日。つまりデー


 『  』が消えてから、数日。

 ボクは神岸小夜と付き合うことになっ


 『  』が消えてから、数日。

 神岸小夜と三回目の


 『  』が消えてから、数日。

 神岸小夜と


 『  』が消えてから、数日。

 神岸


 『  』が消えてから、数日。

 神


 『  』が消えてから、数日。



 『  』が消えてから、数日。



 『  』が消えてから、数目。



 『  』が消えてから、眼が取れた。



「え?」


 目の前にボクがいた。

 集合場所である駅前で、片目の取れたボクがいた。


 目玉ボクボクを捉えて、もう片方のボク目玉ボクを見る。自分の目ボク自分の眼ボクが直に見つめあう。


 ありえないことだが、たしかにそうなっている。

 ボクを手に持っている『  ダレカ』の姿をボクが捉えた。


「えっと、なんで眼を持ってるの……? それ僕のなんだけど」


「……もう忘れちゃったんだね」


 知らない『  ダレカ』は寂しそうな表情をする。まるで相手はコッチのことを知ってるみたいに。コッチは知らないのに…………いや、知ってる。名前も思い出せないけど、『  ダレカ』のことを知っている気がする。


「キミ……だれ?」


「私はカノジョだよ。あなたの、あなただけの」


 彼女は静かに視神経からぶら下がるボクを揺らしながら、淡々と言った。


「あなたが望むならなんだってやれるし、我慢できた。人間に興味がなかったあなたが、他人の名前を覚えようとすらしなかったあなたが、高校のころ、隣の席の女子にトキメキを感じても、その子と同じ大学を目指しても、私は構わなかった。あなたのなかにいれるなら、それで良かった。けど、あなたは私を棄てる。毎クールでアニメの推しのキャラクターが変わるように、前クールのアニメのことなんて忘れるように、まるで最初からいなかったかのように、あなたは棄てる。これまでのようにいろんな属性の私を棄てる。現実でカノジョができたら、前クールの私を棄てる。私はあなたに依存しなきゃ生きていけないのに、あなたに依存させなきゃ生きていけないのに、必要じゃなくなったら棄てる。あなたは理想のなかでしか生きて逝けないことも忘れて。そこに未来はないことを忘れて。だから―――」


 カノジョボクに近付いてくる。


「―――だから、私に依存させてあげる」


 カノジョ眼孔ボクに入りこみ、目玉ボクが取り外される。ボクのない自分ボクの間抜けな姿が視界に映る。


 ボクは視神経の束にぶら下げられながら、高く掲げられる。ボクは真下の彼女を映し、彼女はボクを見つめる。


 舌なめずりしている。物欲しそうなカノジョが開く。


 濡れた視界が目まぐるしく、展開する。ボクカノジョの上で転がっている。カノジョに弄ばれている。


 ごきゅっごぎゅっ。


 ごくんっ♥


 カノジョを通って、世界が真っ暗カノジョになった。

 自分ボクの姿すら見えない純粋な黒の世界に彼女カノジョだけが存在している。ボクカノジョに食べられたはずなのに、身体ボクのすぐ前に彼女カノジョの姿が見える。彼女カノジョの姿しか、見えない。

 彼女カノジョが近付いてくる。


「まだ依存させるから。もっともっと依存させるから」


 ボクの奥が大音量に撫でられる。鼓膜ボクはぶちぶちぶちっと潰れる音を立てて、、と終わる音を最期にすべての音が聞こえなくなった。


「――――!」

 ボクは叫ぶ。その声はボクには聞こえない。

 カノジョボクに入ってくる。たまらなくなって、どこへともなく走りだす。


「無駄だよ? だって私たちはんだから」


 カノジョボクの内側から入ってくる。進んでくる。喉仏ボクを締めつけていき、声帯ボクに触れる。


「――――!」

「いただきます♥」


「     」


 ボクが出ない。どんなに叫ぼうとしても、空白の嘆きボクだけが木霊した。


「私以外を感じる感覚は全部磨り潰すね。要らないから。私を感じる感覚だけあればいい。それがあなたの幸せだったでしょ? やったね。夢が叶うよ♥ 私たちもウレシイ♥」


 カノジョが増殖する。何人ものカノジョが、今まで創ってきたカノジョが、ボクに近付いてくる。


 まるで無邪気な子供カノジョボクで遊ぶように手足ボクを千切っていく。剥がされていく。奪われていく。ボクを、ボクを、皮膚ボクを、ボクを、ボクを、味蕾ボクを、ボクを、鼻腔ボクを、ボクを、ボクを、ボクを、ボ.くを、ボoKを、腎臓V。クを、膵臓じょxkを、膀胱っぼっkを、男性器ボ??クを、クvuを、bbbクを、゛アくを、血管cボbを、dhjkを、染色体k繧シ鷹を、遺伝子アkkb繧を、男性器ボ??クを、繧ォcァを、感触hs弱ずkを、心臓弱ず繝ァを 、 鼓動繧シc鷹を、繝ォァを 、怯え繝お⁈を、恐怖ァ!繝ァ‼︎を、勇気?繝ァ!を、gj弱繧を、弱h繝dを、 弱繧繝ァを、繧??を、全部繧ォ■   

















 あれから、どれだけ経っただろうか?

 変わらず一度たりとも視覚ボk■聴覚■。cクも戻らない。全ての感覚繝懊くが剥がされて、息もできないまま真っ暗な世界繧ォ繝弱ず繝ァの中にいる。

 真っ暗な世界繧ォ繝弱ず繝ァに、僕と彼女たち繝懊けだけが存在している。


 肉体繝■け自体は、ちゃんと生活しているようだった。けど、■懊?精神繧ォ繝弱ず繝ァの奥の奥に追いやられて、無数の彼女たち繧ォ繝■ず◼︎ァに囲まれて介護されている。


 肉体繝■ず◼︎ァはどこにいるのだろう。

 精神■g◼︎ァはどこにいるのだろう。

 ■■繝◼︎ァはどこにいるのだろう。


 どこかにいるのだろうか。

 どこにもいないのだろうか。

 すでに僕は、彼女は、世界は、存在は、    は。


     キミは、本当に存在していたのだろうか。

 僕の中の    キミは、現実の    キミと違うかもしれない。けど、僕は、僕の中の    キミしか感じられない。どちらの    キミが本物なんだろう。

 ただ    キミ名前■■■◼︎ァを呼んでももらいたかっただけなのに……。

 その唇から名前■■■◼︎ァを呼んでもらえたなら、僕はきっと……。

     キミの中に、僕は……。



     繝懊◼︎■繝■け

「あやまらなくていいんだよ」


 なにもない。

「私とあなた以外は要らない」


 だれもたすけてくれない。

「私たちが助けるよ」


 だれもみてくれない。

「私たちが見てるよ」


 なにもできない。

「なにもしなくていいんだよ、ずっと」


「全部、私たちがしてあげるから♥」


「だって私たちは」







「「「「「「あなたの神岸小夜カノジョだから♥♥♥」」」」」」



















「ねぇ知ってる?」

「なにが?」

「私、聞いちゃったんだけどさ。出たらしいよ……この大学にアレ」

「アレって、幽霊?」

「ノンノン。もっとこわーいの……不審者が出たんだってぇー」

「は? 不審者?」

「そー! 不審者! こわいでしょ?」

「……いやまぁ、怖いっちゃ怖いけど今の前振りだと拍子抜け感が……」

「いやそれがさ。その不審者、外部者なのに学部の許可もなく、平然と講義を受けてたんだって」

「あー、それはちょっと怖いかも」

「でしょー! しかも、噂によるとね。そいつ、とある女学生のストーカーだったらしくて、その女学生の住んでるアパートのとなりの空き部屋に勝手に住んでたって」

「うわー、それはヤバい」

「でしょでしょ? なんでも、この大学を受験したんだけど、入試のときにカンニングがバレて落ちたとかで………ああ、もうそんなヤツが何食わない顔して一緒に講義を受けてるかもしれないって思ったら、怖くて勉強に集中できないー」

「こーらっ。勉強しない言い訳にしない」

「えー」

「ホラー系がダメなくせにそういう噂には人一倍敏感なんだから、まったく」

「はーいっ。……あ、そっちはこのあと講義があるんだっけ? 昼食どうする? なんなら確保しとくけど」

「おっ、気が利くね。いいの頼むよ」

「じゃあ、バッチシ確保してくるから楽しみにしててね。小夜サヤちゃん!」

「うん、じゃあまたあとで。…‥ふー。さてさて、ちゃんと講義を受けますかね。にしても……」



「さっきの子、名前なんだっけ?」

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彼女とカノジョとかのじょとカノ女と彼ジョとかのジョとかノじョとカのじょとカノjyoとkaのjoとカnoジョtoK∀nOj。、と彼女。 柳人人人(やなぎ・ひとみ) @a_yanagi

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