日だまりの神社のような、真っ黒なベッドの中のような、温かい怪異譚です。

温かい日差しに照らされた神社で、ふと吹いた風の音が人の声に聞こえたことはありませんか?
暗い病院や学校の廊下に、無機質な科学では語れない、何か不思議なものが存在するような気がしたことはありませんか?

この物語は、関東地方のとある県、とある町の唯一の診療所を経営する「山吹先生」と、その傍で彼を支える「クロコ」という少女、そして診療所に訪れる様々な物の怪の物語です。
筆者が特筆したいのは、この物語があくまで表層的、悪く言えば振り回されるように物語を進める山吹先生のパートの後には必ず、クロコのいわばお片付けのパートがある点です。
クロコは山吹先生の生活を守る為にも、時にはビシっと物の怪達に治療の請求に迫ります。しかしその場面すら健気にも、コミカルにも感じ、決して不快には感じません。
それはきっと、仕方ないなぁ、という感じに多くのことを許してしまえる優しさが、クロコから垣間見えるからだと筆者は思います。

昼の山吹色も、夜の黒色も、この物語ではいつだって温かいです。
着飾ることのない、ささやかな優しさに触れたい方は、ぜひご一読されてみては如何でしょうか。

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