戸隠神社は山奥にひっそりと佇む由緒ある神社で、訪れると本当に美しい自然に囲まれた場所であります。冷涼とした水脈が滔々と湧き立ち流れ出て、二千年の信仰に守られた古樹は苔生し、参道に雄々しく聳えたって私たちを出迎えます。太古の信仰によって開かれた神社、そこがかつて人々が畏敬の念を抱いた地である事を、五感をもって感じる事ができます。
過去に人々が抱いた自然に対する畏怖、霊験なるものへの畏敬。
それらは人ならざる者、人の上にある者を尊び敬う気持ちとして、古くから受け継がれてきた。
それは今この時代を生きる私達にも、ふと訪れ、共有される瞬間がある。
なぜ畏敬の念を抱くのか。なぜ信仰心を抱くのか。信仰の対象は、長い歴史の中で変わり続けてきた。殊更日本の神道は変化を受容し、交わり続けた物でもある。畏敬の念はそのままに、それを表す概念だけが再編され、今も生き続けている。
形は、さほど重要ではない。
大切なのは、「心」なのだ。
その心が、これからも受け継がれるといいなと思いつつ。
神様のキャラクター性も素晴らしく、素敵な物語でした。
作者は長野県在住かご出身なのでしょうね。他に「長野市役所ダンジョン課」という作品を書かれていますが、私自身は未だ読んでいません。これから読みます。
さて、この作品ですが、JRのCMみたいに「そうだ!長野に行こう!」と読後に呟いてしまう良い観光アピール短編です。
複数の神様を同時に祀るスポットが、全国にポツリポツリと点在することは知っていましたが、不信心な人間ゆえに何とも思っていませんでした。この短編小説を読むと、そういうことかもしれないなぁと、素直に納得してしまいます。
星の数は、短編にはMAX2つが信条だからです。
最後に他の読者の方へ)作者の他の作品である「不法就老」を私は読みましたが、こちらも読んでみてください。完成度の高い短編です。カラリとした雰囲気で深い人生訓を語った秀作です。