「笑えるホモ小説だよw」と友達に手渡して怒られたい

嘘ではないです、散りばめられたセンス光るセリフに何度も笑わせられました。
勢いある場面展開にも関わらず読みやすいのも筆力の為せる技なのでしょう。
しかし、タイトルに釣られストーリーにどんどん裏切られながら、彼らの葛藤から絞り出される言葉にガツンガツンと胸を抉られていく。気付けばページを捲る手が止まらない。

同性愛について考え抜かれていることは言うまでもありませんが、それ以上に、誰しもが持つ「愛」の確かさについて胸倉を掴んで問い直してしまう強さを持つ物語です。
それは読者に自己と他者とに向き合う痛みを突き付けるものでもあり、逃れられない登場人物達の痛切な苦しみが共鳴します。
だからこそ、それでもこの小説を読み終えた人が選ぶ好きな人物もセリフもシーンも十人十色で、そのどれもが重みを持つのかもしれません。
主人公の暗澹たる胸の内側からすっと視点が引いて情景が彩られる描写には思わず嘆息しましたし、BGMに流れるQUEENも切なく、美しい。

しかもずるいことにむちゃくちゃおもしろい青春小説でもあります。
これだけ作品世界に引き込んで価値観を揺さぶっておきながら、読後の余韻は爽やかで、前向きにさせてくれる、高校生達の新しい一歩の先に、読者に明日を見させてくれる。
手段誰彼構わず読ませたい、そして「軽い気持ちで読み始めたのに…」と泣かせたい。そんな一作でした。

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