重厚な世界。軽快な筆致。これぞ小説

何度も読んだ。
読むたびに心が震えた。
大好きな作品の1つです。

荒俣宏や大塚英志を彷彿とさせる厚みのある世界観に武侠小説のそれを重ねたところが既に大興奮です。そして軽快な会話と細かい伏線の回収を盛り込んだ娯楽としての側面も十二分。

技法的には前作のインゴルヌカと同様、完成された世界観の中で欠けたものを持つ主人公が迷いながら戦う冒険小説のスタイルです。全編を通して全てのキャラクターが繊細で感情の一貫性があり、これだけ用語がとびかう話でありながら、煩雑になっておらず、素直に楽しむことができました。個人的な好みはスー・グイェンですね。奔放で情に厚くジュイキンを何かと案じる彼は武侠小説やカンフー映画ではよくいる定番のタイプですが、良い奴だなあと思います。

シーンとしては列車の中の格闘戦がお気に入りです。強烈なスピード感は絶賛したいです。私も格闘シーンには一家言ある(フリをしてるただガタガタうるさいだけの)人間ですが、その私から見ても脱帽でした。

全局面において隙のない、揺るぎない大作にして傑作です。是非多くの人に読んでほしいですね。

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