終章 喜びの朝がはじまる
ずーっと、ね。探していたのだと思う。
この世で自分とだけピッタリ合う魂を持った人を、
そして君と出会って、愛する意味を僕はしったんだ。
愛は求めるものでもなく、与えるものでもない。
本当の愛は混ざり合って、ひとつになることなんだって!
そう。君こそが僕の探していた『運命の人』だから。
――昨夜から、しんしんと雪が降っていた。一晩で積った雪は街をすっかり雪景色に変えてしまった。陽の光が真っ白な雪に反射してキラキラと眩しい。
僕と優衣は雪道をしっかりと手を繋いで歩いていた。
降り積もった雪のせいか、道路は通行止めが多いため、今日は愛車のビートルは置いてきた。珍しく電車に乗って駅で降りて、こうして仲良く歩いているんだ。
優衣が滑らないように、ちゃんとゴム長靴を履かせている。彼女のお腹の中には新しい生命が宿っていて、それは僕と優衣の大事な『愛の結晶』なのだ――。
今日は妊婦の定期健診があるので、僕も病院に付き添ってきた。
「優衣の大事なところをお医者さんに診られるのは嫌だなぁー」
「おにいちゃんのエッチ!」
「もう、おにいちゃんじゃないだろ?」
優衣の左の薬指には真新しいプラチナの指輪がはめられている。
僕らは、優衣の
ダイヤモンドダストを見た日から、一年の月日が流れていた。
そして、来年には新しい家族も増える。ふたりで家庭を築き、子どもを育てていこう。小さな夢だけど、それが僕らの未来設計なんだ。そのステップを優衣と共に進んでいく――。
「赤ちゃんが産まれるまでは、おにいちゃんだからね」
「一度くらいは『
「そんなの恥ずかしいから、いやだよ!」
繋いだ手をブラブラ振りながら、ふたりで笑った。
――あんなに暗かった優衣も、今では明るくなってよく笑うようになった。
その後、優衣の父親は家を売って自分の郷里に帰ってしまったらしい。家族に酷いことをしたのだから、孤独な人生になってもしかたない。
一年前までは父親の暴力に怯えて、小さくなっていた優衣……心の傷も癒えて、やっと本来の
今では母親の綾子とも月に一、二度あって買い物や食事にいっている。綾子は崎山という青年の屋敷に住んでいるのだが、そこに涼子も引っ越してきて、今は三人で暮らしているらしい。綾子は「崎ちゃんも涼子さんも良い人だよ。ふたりはいずれ結婚して、グループホームを作るのが夢なんだよ」そんな話をしていた。
涼子も崎山という青年と一緒に幸せを見つけたようだ。過去の
だから、涼子にも幸せが訪れるように僕は祈っているんだ。
「優衣、圭祐さんのお嫁さんになれて……だよ」
小さな声で優衣が呟いたが、肝心な言葉が聴こえてこない。聴こえなくたってわかっているさ。僕も同じ気持ちだから。大事な言葉はそっと胸の中に閉まっておこう。
「こんな可愛いお嫁さんがいて、もうすぐパパになる!」
ありがとう、優衣。――君のお陰で僕は生きる喜びを感じているんだ。
来年も、この道をベビーカー押して君と歩こう。人生という長い道のりを僕と一緒に歩いてくれるかい、君は一生の伴侶と決めた女性だから。
【 しあわせ 】
『 しあわせ 』って言葉を
声にだしたら
淡雪みたいに溶けちゃいそうで
『 しあわせ 』って言葉を
呑み込んで
胸の中でぎゅっと抱きしめている
優衣
朝日が昇ると、また新しい一日が生まれる。
ふたりで幾つもの朝と幾つもの夜を迎えることだろう。
― 了 ―
ダイヤモンドダスト 泡沫恋歌 @utakatarennka
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