第6話「犯人は・・・」
僕は名探偵を気取って、皆をビニールハウスに集めた。
タオが面倒くさそうに言う。
「もう分かったんなら、さっさと言えよ」
がんばって謎を解いた僕を少しは労ってほしい。
「とにかく、みんな、自分が歩いてきた足跡を見て欲しい」
各々が振り返って、足跡を見る。
比較的軽めのレイナやシェインの足あとは浅く、僕やタオの足あとは柔らかい土にかなり、めり込んでいる。
「足跡がとうかしたのですか?新入りさん?」
シェインがタオ同様に早急な答えを求めてくる。しかし、ここはゆっくり解かないと犯人を追い詰めることはできない。僕は冷静に静かに言う。
「しかし、おかしな事に机に変な足跡があるんだ」
「変な足跡ですか?」
シェインが矯めつ眇めつ机周りのあしあとを見るが怪訝な顔をするだけだった。
「みんな青年さんとスピカさんの足跡しかないです」
「ううん、よく見て、スピカはとっても軽いんだ。そう、青年さんが軽く持ち上げられるほど・・・」
青年さんの足跡より深く刻まれた不自然な小さな足跡。
「なのに、どうして、青年さんの足跡より地面にめり込んだスピカの足跡があるのかな?もし、よかったら僕達で力になりたいんだ・・・、スピカ」
これ以上は、追求する必要はなかった。
スピカは突風を纏うと「ふふふ・・・」と笑いながら言った。
「こんなことでバレちゃうなんて・・・。私が体重をかけながら切ったからあんなに深く足跡が付いちゃうなんておもいもよらなかった」
スピカは笑いながら泣いているようだった。
僕はそれを止めたかった。彼女に何があって、どうして、こんな凶行をおこない『カオステラー』になりかかっているのか・・・。
「スピカ!待って、僕たちは戦いたいんじゃない!話し合いたいんだ!どうして、君がこんなことをしたのか、それを知りたいんだ!」
そう言うと、スピカは投げつけるように青年の失われた『ページ』を投げつけてきた。
「どこが幸せよ!どこに救いがあるの!私もあの人も不幸になる『銀河鉄道』なんて一生完成しなければいいのに!」
失われた青年の『ページ』には実に悲惨な末路が書かれていたのである。
僕はそれを直視することすら恐れた。
僕には耐え難い『運命』だったから。
けれど、青年はその『運命』を直視し、受け入れた。
彼が全ての『ページ』を読み終わると、彼はいつものように笑って言った。
「スピカ、悪いのはお前じゃない。「運命』を受け入れる準備のできなかった僕だよ。こんどこそ「運命』を受け入れて見せるから、そんな怖い顔しないで・・・」
そんな青年の言葉も聞こえないのか、スピカは青年に向かって流星を落とす。
すんでのところで、タオが青年を突き飛ばす。
「タオ!」
タオは口から血を流しながらも、笑った。
「こんなのへでもねーよ。それより、よくやったな坊主!」
レイナもシェインもタオも僕も『導きの栞』を構えた。
「みんな、いくわよ!」
【戦闘:カオステラー:スピカ】
スピカを倒すと、彼女の体はほの白くひかり始めた。
そう。星は地上では生きていることはできないのだ。
だから、青年はあんなに一生懸命に『空をかける乗り物』を作っていたのだ。
彼は愛おしそうに彼女の体をかき抱き、消えそうな体をつなぎ止めようとする。
レイナがそっとその肩に触れる。
「彼女を助ける方法があるわ」
・・・それは調律だ。けれど、調律してしまったのなら、この『想区』は元の物語に戻り、スピカの守ろうとした青年は・・・。
「助けられるけど、その代わり・・・、あなたは・・・分かっている?」
優しいレイナの言葉が、僕にはバラの刺のように思えた。
自分を助けるか、愛しい娘を助けるか、二択を迫っているのだ。
こんなに酷な選択肢があるだろうか?
そして、彼は迷わず・・・。
確認するようにレイナは青年を見つめた。
「じゃあ、調律を開始するわよ・・・」
いつものようにあの不思議な本を取り出し、レイナは目を閉じる。
「混沌の渦に呑まれし語り部よ・・・」
「我の言の葉によりて、ここに調律を開始せし・・・」
光が世界にあふれて、何もかもを飲み込んでいく。消えゆく少女も、泣きはらす青年も、未だ沈黙を守り続ける巨大な機械も・・・。
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