第5話「犯人さがし」
雀の鳴き声によって僕たちは早々に起こされた。冷たい夜露も凍える風も当たらない暖かな部屋で一夜を明かし、体力は十分に回復していた。
うん、とっても気持ちのいい朝だ。
こんなに爽快な朝を迎えたのは随分久しぶのことだなと、僕は思った。
スピカも青年もまだ僕たちの泊まった部屋へとやってくる気配はない。
そこで、僕は第二回『ページを盗んだ犯人』探し論争をすることにした。
タオ、シェイン、レイナを起こし、『ページ』の行方を話し合うことにしたのだが・・・。
そう。全く手がかりがない。
犯行は深夜、ビニールハウスで行われた様子。
ビニールハウスは誰もが入れるような警備体制であり、誰にでも犯行は可能。
スピカや青年には犯行動機がなく、村人も同様に犯行動機がない。
となると・・・答えは・・・、
「ロキ達ね・・・」
重苦しい口調でレイナが言った。確かに、ロキ達なら犯行は可能であり、もちろんのこと犯行動機もある。しかし、僕はそれに違和感を感じた。
今までロキ達は『カオステラー』を生み出してきたのだ。決して、他人の『運命の書』を切り取るような真似はしてこなかったのだ。
そんなことを話し合っていると、隣の寝室から寝ぼけ眼のスピカと青年が姿を現した。ふああとあくびをしながら青年は円陣を組んで話し合う僕たちを見て不思議そうに言った。
「朝から一体、何をしているんだい?」
「同じ質問を私もしたいわ・・・」
と、隣でスピカも僕らを不審な目で見ていた。
僕たちはごまかすように円陣を解いて、笑った。
「あ、朝ごはんはパンがいいわね。どこかに買い物できる場所がないかしらって話しあっていたのよ。旅の食料も底をつきかけていたし・・・」
そう言うと、青年は優しく笑って答えた。
「それなら、買い物に行こうか?丁度、米やパンを切らしていたからね」
そう言って、僕たちは朝から買い物に出かけることにしたのだった。
景気のいい声で、呼びかけが行き交う中、青年とスピカはするすると進んでいってしまう。人を避けるだけでも一苦労の僕らにスピカは激怒して声を上げた。
「はやくしなさーい!」
「ま、待って~」
「もう、旅人ならこれくらい慣れててもいいんじゃないかしら?」
「ごめんごめん」
そう言いながら、僕たちは二人の後に続いた。残り少なくなっていた食料・・・、特に保存食や腐りにくいものを買い足す。また、昨日のお礼にと、二人になにか必要な食料があれば奢ると言い、多少の生ものを買い足す。多分、これって朝食になるんじゃ・・・。そう思った僕はこっそりと、保存のきく野菜も買い足しておく。
買い物を終えて帰宅すると、さっそく朝食を作るために青年がキッチンに立つ。僕も手伝う為に、キッチンに並んで立つ。やっぱり先ほど買った食料は朝食用になるようで、彼は紙袋から卵や肉を取り出して、フライパンで焼いた。
部屋中にキッチンからの良い匂いが充満して、皆が朝食を今か今かと待っている。
僕と青年は「ははは・・・」と笑って、目玉焼きにこんがり焼いたベーコンにパリッとしたパンをテーブルに運ぶ。
そして、昨日と同じく手をあわせて言う
「「いただきます」」
そんな朝食を済ませて僕たちは、犯人を探すべく聞き込み組みとビニールハウスを探す組みで別れた。僕とレイナはビニールハウスを探す組みになったので、とりあえず、犯人の足跡がないかどうかを探すが、スピカと青年の足跡しかない。噂では二人を馬鹿にして村人はこのビニールハウスには近寄らないとか・・・。
柔らかい土にしゃがみこんで、レイナが俯いた。
「困ったわね」
「そうだね。全く犯人がわからない・・・」
僕はレイナの隣にしゃがみこんで、同じようにため息をついた。
その時、気がついた。
この土は柔らかい。そう、僕たちの足跡がくっきり残ってしまう程に。
それなのに、犯人は足跡もつけずにビニールハウスに入り、青年の『ページ』を奪ったというのか。そんなことは不可能だ。
だって、『ページ』を切り取るには机とナイフが必要だ。
そして、それを使うには、切り取る力がかかる『足』が必要なのだ。
ということは・・・。
「分かった!」
しゃがみこんだままのレイナは目を白黒させて、「は!?え!?」と言っている。「犯人がわかったんだよ!」
僕はレイナに向かって言った。
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