3月14日のこと

 あの時、約束した。

 必ず、ホワイトデーまでに犯人を見つけると。


「あなた」と呼ばれながら、椅子に縛り付けられて画面に釘付けにされてまで、聞かされた、奇妙で恐ろしい物語。


 残念ながら、見つけてあげることはできない。

 なぜなら、これは、れっきとした復讐譚なのだから。

 冴島さんも、日向さんも、たった一人の中に男と女を持った人物によって、悲惨な末路をたどってしまった。

 ならば、その報いを与えなければいけない。


 残念だったね。

 あの時この薬指を切っておけば、こんなことにはならなかったのにね。

 途中は冷や冷やさせられたな。背筋がぞっとするようなことも。





 2月12日に、遊園地で、あまりにも可愛い二人組の女の子達を見かけた。喧嘩していたみたいなので、片方の子を誘った。ついてくるというので、おばけやしきに一緒に行った。そこで、凄い話を聞かされたんだ。


「私…人を殺してしまったことがあるの……もう、耐えられない。あの人と一緒にいることが罪滅しだと思っていた。だって、あんなにも恐ろしいことをされながら、冴島さん、健気に相手をしてあげているものだから……私、せめて、取り除いてあげたかったの。冴島さんが日々与えられている恐怖を。だから、私は、冴島さんを……お願いがあります。この手紙を――私の薬指を切って、あの人に送りつけてください。そして、私のことを……ここで、殺してください」




 3月14日になった今……一人の奇妙な死体が見つかった。

 左目がなく、左手の薬指がなく、肺以外の臓器がない遺体が。

 遺体は、既に絶命しているのにも関わらず、数秒おきに、あることを口にしていたそうだ。




    “だれが ぼくに こいを した”





 そのニュースを、この画面で確認したあと、電源ボタンに触れた。

 そう、今日不幸にも命を落としてしまった、愛しい君への、最後の手向けプロポーズだ。

 暗転した画面に映ったその顔は、あまりにも不気味な形相で、ただ、藁っていた。







           ボクに恋をしたのは







           おまえだ

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だれがぼくにこいをした 青我 @untitled

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