2月✖✖日のこと・・・・・・


 ……さて、この話も大詰めになってきました。

 こんなにまで気の滅入るような話を聞いていただいて、感謝しています。


 あなたに、ここまで危害を加えるつもりはありませんでした。

 しかし、ボクは根っからの、仕方のないまでの殺人鬼なのです。


 カノジョは、そんな殺人鬼であるボクを呪い、2月14日の出来事は起こりました。

 霧島さんの目に映った水琴の姿は、もしかしたら、霧島さんの記憶だったのかもしれません。もしくは、あの左胸で潰れていた薬指が見せたのかもしれないですね。

 もはや、論証できる材料はありませんので、あくまで想像でしか語れませんが。

 水琴が冴島さんを殺したときの姿が、霧島さんは目に焼き付いて離れなかったのだと思います。

 真相を知ってしまっていたからこそ、ボクを殺そうとしたのでしょう。

 ボクが、水琴を使って、冴島さんを殺させたことを、知ったからだと思います。


 冴島さんは、薬指を切られ、目と中身を失って、親友に殺される形でこの世をさりました。それを仕向けたのが、ボクでした。

 カノジョから奪ったものを取り返しにきたのだと思います。

 ……本当に、おかしな話です。

 ……カノジョから取り返したかったのは、ボクのはずなんです。ボクからの贈り物を、取り返しただけなのに。

 

 でも、不可解な点がひとつだけ、浮かび上がるのです。



 じゃあ、いったい誰が彼女を殺したのでしょう。

 それを、いったい誰がボクに送りつけてきたのでしょう。




 …ねぇ




 ……あなたなのでしょう?




 あなたが彼女を殺した。

 そうに違いない、そうに違いないのです、そうでなければ、だれが、だれがいったい彼女を殺したというのです?


 今日、ボクは、カノジョに殺されてしまうでしょう。

 昨日の渡辺君のように。


 ボクは、死にたくない…。

 だから、代わりに、あなたに…彼女を殺した罪で、あなたに死んでもらいたいのです。



 ほら、見てくださいボクのお腹。

 ポッカリと空いた穴みたいに、何もないみたいでしょう。




 ボク、あと、心臓しかないんですよ。


 死ねないのです。

 目を失っても…ハラワタを失っても……ボクは死ねない。



 ボクは、カノジョに、彼女に、愛されてしまった。



 次のホワイトデーに、渡さなければならないものがあるから。




 もし、




 もし、ボクのお願いを聞いてもらえるのなら……





 ボクにこいをしたひとを


 探してもらえませんか



 ……わかっています。


 ……あなたは犯人なんかじゃない。


 こんなことをしてしまったのは、後悔しています。



 でも、ボクは……死にたくない。


 今日、心臓を奪われたら、ボクは……。


 ただの人体模型として、生きなければなりません。




 でも、ほら……あなたの後ろに、いるでしょう?


 カノジョが。




 もう時間切れなのです。

 だからせめて……



 あなたの力をお借りしたいのです。



 これは、歪んだ愛情と愛憎が生んだ悲劇だと思います。ボクも、カノジョから彼女を奪った人間として、この罰を受けなければならないのだと思います。



 ほら、カノジョがもう、そこまで――。


 ひとまず、これでお別れです。





 次のホワイトデーまでに、見つけてくださいね。

 まぁ、無理にとはいいませんが……。

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