第30話


 ここは誰も知らない島。

 島と言っても太古に大いなる力で破壊されたために、切り崩した土地しかない。


 ここの地面が突如ひび割れて、そして破裂する。中に現れたのは、いわゆる"蟲"、すなわちこれはプロテーア・クレアトゥーラである。


 自分はルシアではない。しかし、どこか遠くに"ルシア"の気配を感じる。しかし、"ルシア"はこちらの気配を感じていないだろう。"ルシア"はプロテーア・クレアトゥーラの気配を感じつつも、人間として蘇ったのである。

 では自分は誰か。

 自分はプロテーア・クレアトゥーラである。しかしこの事を考えるに、何か誰かの意思も宿っているはずである。

 しかし明らかな事はある。"ルシア"が恋しい事。そして"ルシア"と自分の全てを奪った存在が憎い事。

 ああ、自分がもっと動けたら、と考える。

 自分以外の生き物がいないから、他の形に変化する方法もわからない。

 ひたすらここで誰かが来るのを待たねばならない。

 その時に、復讐をしよう。そして"ルシア"を自分のものにしたい。

 ああ、誰か来ないかなあ。


 そうプロテーア・クレアトゥーラは岩の中でうずくまる。




 しかしここはだれも知らない島。古の王国。


 未だ、人が訪れる気配はない。


 いきものはいつまでもいつまでも、恨み続けている。





(破壊の姫 - 終わり)

 

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破壊ノ姫 NUJ @NUJAWAKISI

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