小説を書いて広く読んでもらうことって、こういった研究開発やるベンチャー企業のそれによく似ていると思うんですよね。
執筆環境を整え、評価してくれる人々を見つけ、とにかく執筆して、資料を見つけて、先行作品にも目を光らせ……その工程は大学や企業の研究とそっくりです。
研究環境を整え、評価してくれる人々を見つけ、参考になる論文を探し、先行研究に目を光らせ……ほらそっくり。
研究も、執筆も、一つの考えをまとめる行いである以上、やることや評価の基準ってそう変わらないんですよね。
そんなこと言われたって研究室とか研究とか縁無いよ。そこでのやりかたが研究に役立つってどういうことだよ。
というそこの貴方。小説を書きたい貴方、書いてる貴方。
是非この作品を読んでみて下さい。
この作品にはそういうことが書いてあります。
第二部も始まってますし追いかけるなら今です!
研究者は、そうでない人と比べ明らかに偏りを持った人たちであるーーかつて研究の世界に関わった私はそう思っています。彼らの偏りは世界にとっては珍しくて、時にそれが大きな利益をもたらしますし、逆にそれを世界が毒と感じれば排除されてしまうマイノリティなのです。このお話はそんな偏りを持った人たちが世界に一度排除され、居場所を失っても諦めずに居場所を創ろうとするお話ーーなんじゃないかな〜と最新話までみて思っております。
細かな専門用語がありますが1話1話がテンポよく読めるので研究者の方や先の紹介文に興味を持たれた方にオススメです。
期待する点は彼らが創っている居場所はどうなるのか、そして世界に反撃はできるのかを見届けたいです。続きを楽しみにしております。
純喫茶アプライドバイオシステムズとカフェ・インビトロジェンが合併してコーヒーショップライフテクノロジーズになるも、最後はメイド喫茶サーモフィッシャーに買収される話……ではない(分かる人には分かるネタ)。
実は私もポスドクなのですが、よもやポスドク問題なんて一般の人からはろくに知られていないであろうテーマを扱った小説がこんなに人気を博するとは思いもよりませんでした。
追い出されたポスドク達が起業する過程を描いた話なので、アカデミックの世界よりもどちらかというと起業に重点が置かれていますが、それでもアカデミックのエグい部分を垣間見ることができるストーリーです。
ボスが田中前教授のような人格者か、それとも竹ノ内教授のような悪党かで分かれる天国と地獄!
それにしても、敵役の竹ノ内教授と中村助教がいい感じに嫌な感じですね。邪悪というよりは俗悪、いかにもフィクションにいそうな悪者キャラというよりは実際にいそうな嫌な奴。それだけに尚更、読んでいて「この野郎……!」と思わせられます。世の中には主役以上に人気を集める悪役とかもいますが、読者に嫌悪されてこそ悪役という考え方をするならば、実に良い悪役だと言えそうです。