見てィますか?^o^

ワタシ

 最初に言っておくがこれは俺の実体験である。

 まだ完結した訳ではないし、今その恐怖体験の真っ只中なのだが、随時更新していこうと思う。小説にする事で怖さは半減するかもしれないが、出来るだけ細かく当時の描写を書き連ねることで読者の皆さんにも俺の体験をリアルに感じてもらいたい。本当は怖くて少しでも気を散らしたいだけなんだけど。

 ではどうぞ。


 俺はとあるショッピングモールの家電売場でアルバイトをしている大学2年生だ。今は9月の初め。もうそろそろ夏休みに終わりが見えてきた頃だ。

 俺の住む町は比較的高齢者が多く、俺個人としては認めたくないのだが田舎である。田舎のショッピングモールの家電売場を想像して欲しい。恐らく閑散とした店内を想像するだろう。その通りである。遠くへ家電製品を買いに行く気力のない者、つまり高齢者を中心に俺の家電売場で家電製品を購入していくのだ。ぶっちゃけ俺に言わせれば、ここで買うなら◯mazonで買えと言いたい。要はシンプルに商品の値段が高い。


 ある日、いつも通りレジでボーッと立っているとお婆さんが俺の方に向かってきた。お婆さんは腰が曲がりすぎていてもはや手が地面に着きそうだった。顔は帽子を深くかぶっていたため判別できなかった。レジに向かってきたというよりは俺に向かってきた、直感でそう思ったのだ。

「 いらっしゃいませ。」

 マニュアル通りの対応でぎこちない笑顔をお婆さんに向ける。するとお婆さんは商品をレジに並べると思いきや、紙切れを俺に渡してきた。

「申し訳ございませんが、お客様から受け取るのはお金だけって決まってるんですよ〜。」

 これはイカしたジョークだ。80点。原則個人的に客から何かをもらう事は禁止されている。理由は知らない。そう決まっているから。

 するとお婆さんは、何も言わず紙をレジに置いていき、去っていった。

「あの歳の婆さんからラブレターとか笑えんやろ。」

 気がつくと次の客が並んでいたので、後で捨てようと紙切れを後ろポケットに入れた。


 夜の9時過ぎ、バイトが終わり、いつもの帰り道を歩いているとふと思い出したことがあった。

 402号室。そこは元々俺の家族が引っ越し先に決めていた団地の中の一室だった。

 というのも、親父がなぜか頑なにその部屋に引っ越すのを拒んだ為別の棟の部屋に引っ越すことになったのだ。

 後から聞いた話だが、弟の友達曰く前に402号室に住んでいた家族は一家無理心中したらしい。どうせ嘘やろと思って事故物件サイトを見ると間違いなく402号室は事故物件に指定されていた。

 その402号室がバイトの帰り道、階段を上った左手に見えるのだ。悪戯なのか、その階段を上ったすぐ向かいに掃除道具入れがあり、そこにお札のようなものが貼ってある。俺はバイトの帰り道、見たくもないのにいつも402号室を見てしまう。人は見たくないものほど返って見たくなるものなのだ。

 いつも通りその402号室を横目で見ると明かりがついていた。思わず二度見した。新しい入居者だろう。入居者はそこが事故物件だということを知っているのだろうか。


 俺は気がつくと402号室の前まで来ていた。入居者にそこが事故物件のことを伝えるためだ。何かが起こってからでは遅いと思った。というより俺のバイトの帰り道にこれ以上奇妙な怪談話は増えて欲しくないのだ。


 ピンポーン...


 団地内に響き渡るインターホンの音。

 しばらく待ったが出ない。見知らぬ家のインターホンを押すだけでも相当な勇気がいるのだが、その時の俺はどこかしらバグっていたのかもしれない。

 ドアノブを回す。ここで俺がバグっていることを確信した。不法侵入の4文字は頭になかった。ドアには鍵がかかっておらず開いていた。


 キィィ


 ドアを開け、中を覗く。明かりは消えていた。

「なんやねん、明かりついてたんは気のせいか。下の階の部屋でも見てたんかな。」

 ボソボソと呟き、閉めようとした瞬間部屋の廊下で何かが動いた。

 暗くてよく見えないが、何かが廊下で動いている。すごいスピードだ。まるで蜘蛛のような...。大きさは人間くらいあるように見える。

 その光景に目が釘付けになっていたが急にその"なにか"がこちらに近づいてきた。


「やばいやばいやばい!!!」


 見つかったか!?


 ドアを勢いよく閉め、閉じ切る瞬間にその恐ろしい姿が一瞬目に入った。


 四つん這いでこちらに這って来る人間が。それもただの人間じゃない、四つん這いだが顔が逆さまなのだ。口が上、目が下、長い髪は下に垂れて引きずっていた。顔を無理やり180度曲げたかのような。

 もはや人間ではなく化け物である。その化け物がすごいスピードで手足を動かし、這っていたのだ。


 バンッ!!!!!!


 ドアを閉め、急いで階段を下り、家に全力疾走で帰った。後ろを振り返る余裕はなかった。


 追ってきてるか!?


 スピードなら絶対あの化け物には敵わない。

 402号室から家まで走って大体3分。

 走っている途中に異様に腰の曲がった老人とすれ違ったが、化け物相手に老人では心許ないためスルーした。

 ただ、ただ家に無事に着いてくれと願った。


「お母さん!!!!!!まじでやばい!!!!」


 突き破る勢いで玄関のドアを開けた。

 家に着いた俺は靴を脱ぎ捨て、リビングのドアを勢いよく開けた。


 誰もいなかった。晩飯と置手紙が机の上に置いてあった。

 どうやら今日家には俺1人しかいないらしい。最悪のシチュエーションである。

 家族には出来るだけ家に早く戻るよう連絡した。

 とりあえず風呂は入らない。頭を洗っている時に頭上であの化け物が張り付いてこちらを凝視している光景が頭をよぎったからだ。家に誰か帰ってきてから入ろう。

 そして自分の部屋の戸は完全に閉め切り、カーテンもして大音量の音楽を流した。

 リビングでご飯を食べることすら怖い上、食欲が皆無だったので風呂同様、飯を食うのも翌日に回そう。もう部屋から出る気はない。

 食事を終え、時計を見ると12時前だった。

 一応連絡のつく友達には片っ端から連絡を取り、家に一緒に泊まるよう説得したが都合のつく友達はいなかった。電話したところでこんな話一体誰が信じるというのか。当の本人の俺ですらまだ信じきれていない状況を。

 いざという時の為にカッターと盾代わりのダンボールをベッドの横に置いておいた。こいつらにはお世話にならず夜を明かしたいが。

 歯磨きをするのを忘れたことに気がついたが、口が臭いのも武器だろうと今思えばバカな考えに一理ありと思い、部屋の電気を消した。案外眠りに入ることは難しくなかった。



 

 ハッと目が覚めた。




 外で雷が鳴っている。カーテンをしているため光っているかどうかまでは分からないがゴロゴロと音だけは聞こえる。視界がまだボヤけた状態でスマホで今の時刻を確認する。昼の1時だった。無事に夜は明けたようだった。安堵感が一気に湧いてきた。

 しかし睡眠時間の割には眠気があまり取れず、2度寝をしようとするが雷の音で中々眠れない。



 パチッ!



 玄関の電気が点く音だ。部屋のドアの上には廊下の明暗がわかる窓のような物が付いている。明るい。俺の家の玄関の電気は人が通ると点灯する。


 人...?


 しかし電気が点いた音以外に何も聞こえなかった。

 おかしい。

 そもそもあの電気を点ける為には玄関の扉、扉を開けて突き当たりのリビングのドア、そして突き当たり左の俺の部屋のドアのいずれかを開けなければ点くことはない。

 どこから、誰が、何をしにきた。

 スマホの時計をもう一度見た。


 3時32分


 俺は"13時"と"3時"を見間違えていた。視界が定まっていない状態で時刻を確認した所為だった。



「丑満時...。」

 冷や汗が止まらなかった。体が動かない。金縛りではない。完全に思考が停止したが故の硬直だった。



 カサカサカサカサカサカサカサ

 カサカサカサカサ



 家の廊下を何かが這っている音がする。音は玄関の方から徐々に近づいてくる。考えるまでもなかった。



 間違いなく"あいつ"だ!!!!



 どうする!逃げるか!どこへ!どうやって!寝てやり過ごすか!いや無理だ!この状況で寝られる訳がない!


 カサカ....


 音が止まった。どこかへ逃げてくれたのならそれに越したことはない。だが、終わるわけがない。




 ドン!ドンドンドンドンドン!!!!!!




 こちらに気づいたんだ!!!!!

 部屋のドアを叩いている!!

 カッターを握りしめる。


 ゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔ


 奇妙な唸り声と共にドアを叩いてくる。

 既に精神は限界に達していた。


「もう止めてくれよ!!!!!!!」


 大声でそう叫んだ。

 叫んだ瞬間ピタッと唸り声とドアを叩く音が止んだ。


 叫んだ後布団に包まり、震えながら目を瞑っていた。

 どれくらい経っただろうか。ただひたすらスマホをお守り代わりに握りしめ、正体不明の化け物の話をここへ書き連ねていた。しばらくすると震えも収まり、雷の音も聞こえなくなっていた。

 ここまd




 ドアの外を確かめようとベッドから腰を起こし、ドアの上の窓を見た。眼が合った。


「うわぁあ!!!」


 目が大きく見開かれた顔が逆さまの人間が顔と手のひらをぴったりと窓にくっつけ、窓からこちらをじっと見つめていた。


 その人間と目があったその直後ドアが開き、




 カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ

「ゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔ」




 そこからは何も覚えていない。


 目がさめると普通に家族が食卓でご飯を食べており、何事も無かったかのように私も生活していた。


 きっと長い長い夢を見ていたのだろう。


 402号室の前の住人は4人家族だった。しかし夫の浮気が原因で離婚。夫だけが家を出ていく形になり、母とまだ幼い子供2人が家に残った。

 離婚後、元夫は養育費すら送らず母の稼いだ僅かな給料で生活していた。

 しかし母はその後病気を患い、仕事に行けなくなった。

 病気は一向に良くならず、貯金も底を尽きかけ、電気水道を止められた。

 限界を感じた母は子供たちに睡眠薬を飲ませ、首を絞めて殺してしまった。

 そして自分も首を吊って死のうとし、縄に首をかけ、台にしていた椅子を蹴った瞬間ぐりんと顔が曲がり、死にきれずに地面に落ちてしまった。



 そう、死んでいない。

 死に切れなかった。


 



 私は男がバイトに着て行ったズボンのポケットに手を突っ込んだ。

 紙切れが入っていた。



 お前は必ず402号室で私を見る



 そう書いてあった。




 そう書いた。




 接客する時はしっかりお客様の顔を見て、目を見て対応しましょう。





 










































 





 あ、これを読んでるあなた。

 もう遅いから。




 途中まであの男が書いてくれていて手間が省けた。








ほら、聞こえるでしょう


























 ゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔ





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

見てィますか?^o^ ワタシ @Noppoman

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ