第22話 ブラックボックス2

ブォオオン!!!!

研究所の外で車のエンジン音が聞こえる。


所内の窓から外を覗くと、地下駐車場から銀色のセダンが出ていった。

「英美の車か!……しまった…!」


「大智、どうした?」

「え?」俺が振り向くとそこにはニムがいた。

…まてよ、車、自動運転、AIによる行先案内……。

「ニム、窓の外、あの銀色の車両のAIにハッキングできないか!?」

「おいおい、いきなりだな。やっとメンテナンス終わって久々の再会だっていうのに」

「緊急事態なんだ!できるのか、できないのか!」

「ったく、できるに決まってんだろ!!」


横にいるニムの目が発光し、走り去っていく英美の車を捉える。

おそらくあの車に花帆は乗せられているはずだ。


絶対に助け出す!そして英美、お前の真意も。


――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――

車は大通りの国道から高速道路に入っていた。ニムの指示通りに行くと車は今、東京方面に向かっている。


「でー、なんであたしまで乗せられてるんだよ~」フロントミラー越しに見えるニムは不服そうに後部座席に座っている。


「だってお前がいないと、追跡できないだろ」運転しながら俺は言う。


「……はぁー。まったく。あとさ、隣の金髪の女、だれ?大智の彼女か?」


「違うよ。彼女はマリナ・スティングレイ。お前と同じ異世界からの訪問者だ」俺は助手席に座るマリナをニムに紹介した。


「ふーん。よろしく、マリナ」


「こちらこそ」


あれ?なんだろう二人の間によく分からない距離感があるような気がするんだが…。いや今日初対面なだけだし、きっと二人とも緊張しているだけだろう。


「大智、次の道、左」ニムが指示を出す。


「了解」車は高速を抜け、都心の環状線に出た。


一般道に降りてからもカーナビ代わりにニムに案内をしてもらう。

そして……。

「あー、ここだ。この建物ン中で止まってる」ニムがそう言った先で車を停止する。


「…まじで言ってる?ニム」


「嘘ついてどーすんだよ」


俺の目の前には日本の政治の中枢であり国権の最高機関である国会議事堂が見えている。確かに英美は最初、イッカンには文部科学省が携わっていると言っていた。


だが何故、花帆を連れて国会に行く必要がある?


一体ここで何が行われようとしているんだ……。


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異世界特別管理委員会・イッカン 佐伯春人 @saeki09

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