エピローグ『切っても切れない義兄妹(完結)』

『混沌の渦に呑まれし語り部よ。我の言の葉によりて、ここに調律を開始せし……』

 ――レイナの身体から白い光があふれた。

 それは混沌を秩序に戻す、調律の光。

 こうして想区はもとの姿を取り戻した。



    ×   ×   ×



 レイナの調律によって、歪められた運命がが元通りになった。

 メロスはやり直すことになった妹の結婚式に参加し、その後、セリヌンティウスとの友情を証明したことで王を改心させた。

 メロスの歪められた運命は、正しい結末を迎えることとなった。

 こうして、メロスの想区での旅は終わりを迎えた。



 ――僕たちは次の想区に来ていた。

 街中を歩きながら、シェインとタオがにらみあっている。



「どうしてタオ兄は、栗まんじゅうを買ってきたのですか! シェインといえば、鬼まんじゅうに決まっています!」

 シェインは人さし指を立てて頭に掲げ、鬼のツノをアピールする。

「もういいです。タオ兄とは分かり合えません」

「なにぃ~!? はん! こっちこそせいせいするぜ。もうお前なんて知らねぇからな」

 フンと顔をそらしあうシェインとタオ。



「ハァ……。あんなことがあったのに、2人とも全然懲りてないわね……」

 顔に手をついてため息をつくレイナ。

「あはは……」

 エクスは釣られて苦笑。

「ったくよぉー坊主。オレのどこが気に食わないってんだよ。なぁ?」

「ぼくに聞かれても……」

 つかみかからん勢いでエクスに同意を求めるタオ。

 その様子を見て、シェインは微笑む。

「……タオ兄のバカ」

 陰で嬉しそうにフフーンと嬉しそうなシェイン。

「あっ、おいシェイン。いまオレを見て笑っただろ?」

「……笑ってないのです。タオ兄は自意識過剰なのです」

「なにぃ~!?」

 ギャーギャーと口げんかを始めるタオとシェイン。

 言い争ってはいるが、どこか楽しんでいる空気だった。

 2人を見て、エクスは微笑してつぶやく。

「……喧嘩するほど、仲がいい……のかな?」


おしまい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

グリムノーツ ~兄妹喧嘩 走れタオ!『走れメロスの想区』~ indo @nido1211

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ