一匹の黒い魚が、泳げますように。

 気付かぬうちに束縛されていたり、誰かを束縛していたり。そんな日常は繰り返されているのかもしれない。しかし主人公は、友人たちがいたおかげで、自分が受けた束縛を、何とかかいくぐってきた。
 そんな主人公が見つけた、何もいない水槽。その中に、一匹だけ、黒い魚が隠れていた。主人公は黒い魚に自分を重ねる。
 魚は水の中でしか呼吸ができない。狭い水槽が、きっとその魚の世界そのものなのだろう。仲間がいれば、その魚は、水槽を泳ぎ始めるのだろうか。例えそのために水槽の酸素が薄くなって息苦しくても……。
 いつか、その魚が、水槽を自由に泳げる日が来ることを願わずにはいられない。

 是非、御一読下さい。