第21話 少し話は戻って

 ある雪の日

積もっていて 自転車では、学校へ行けないので 病院のすぐそばの

バス停へ行くと先に 1人男性が待っていました。

遠くからも わかる大柄のその人は、同じ准看護学校へ通う T君。

 クラスには 看護師を目指す、男性が 確か5人いました。

やや年配の2人と 30代位の方が1人、高卒で入ってきた2人。

高卒で入ってきた 2人は、T君とH君。男性陣は いつも塊でいるし

休憩時間は タバコを吸いに行くので、殆ど話した事がなかった。


 T君は 何かの本を見ていたみたいで、私が 近付いている事に

気付かなかった。私が 後ろに立っても、そのまま。

 T君が 勤める病院は、私が勤務する病院から 1キロ位先の

総合病院です。准看護学校へ通う様になって 初めての冬。

これからも 雪の日は、T君も バス通学するんじゃないかと思い。

それなら 声を掛けておかないと、後々 気まずくなる気がして…


 『こんにちは』

と 声をかけてみた。


 T君は 物凄く 驚いた感じで、何で 声掛けられたのかも

全く わからない感じでした。

 同じクラスに居る者ですと言うと 納得した感じだったけど

かなりの動揺ぶりで、どうしたら良いか 困ってそうです。


 そこへ 丁度、バスが到着して 乗り込む。

平日の 日中のバスは、ガラ空きで 他の乗客は居なかった位だったかと思う。

 だけど T君は、大きい躰をしているので 2掛けのシートでジャストな感じ。

私は 通路を挟んで 隣の席に座りました。離れて 座るのも、何かねぇ~

そうなると 何か話さないとなっと思って、ちょこちょこ 話しかけた。

 少し怪訝そうな感じもしたけど 答える姿勢は、そこまで 嫌がっている

様には思えなかった。


 結局 学校へ着くまでの、数十分だったけど 出身とか 色々と話してくれた。

学校へ着いてからは T君は、喫煙所の方へ行ったし。私は 教室に入って

話さなかったけど。

 次の日も、その次の日も、バス停で会う日が 続いたので、自然に話して

いく様になりました。


 T君が 看護師を目指すきっかけとなったのは、高校の先生が

「お前 車好きだろ?車の運転手させてやるよ」

と言われて、病院での 院長の運転手として、病院へ就職したんだけど

「看護師免許も取れば、給料上げてやる」と言われて、シブシブ通って

いるんだと教えてくれた。

 病院では 看護師の仕事は、殆どしていないくて 雑用の仕事を

してるんだと聞いた。


 身長180センチ近くで 体重は100キロに近いんじゃないかと思う体型。

高校時代 ソフトボールで、全国にも行ったとか言っている ガッチリ系。

 顔は 優しそうなんだけど、外見からいったら 声を掛けにくい感じ

なので、看護師に向いているかというと… あんまり向かなそうだったから

私も どうして、看護学校へ来ているのか 不思議だった。


 そんな感じで 一冬過ごして、学校でだけ しゃべる相手で ジワジワ

仲良くなっていきました。


 T君は 確か… 2年になってからの どこかで、自分で 車を買った様で

車で 通学する様になった。私は 余程、天候が悪い時で無い限り 自転車で

通っていたから、冬以降は そんなにT君と話はしなかった。

 私は 彼氏さんが出来たし、2年生は 実習も多かったから、すれ違いも

あったりして、ただの クラスメイトな感じでしたけど。


 Nさんとお泊りが 病院や家に バレてから、私の行動が 狭まる事になった頃。

雨の日に バス停で待っていると、T君が 通りかかって、学校へ乗せて

行ってくれたんです。

 気持ちも 塞ぎ気味だったし、Nさんとも 会えない日が続いていて

帰りも 車で、送ってくれたりしていて。


 バスの日だと バスの待ち時間があったりするので、そんなに早く

病院に戻れないはずだったから、車で帰ると 早く着き過ぎるし。

T君も 早く帰っても、仕事が待ってるからと ちょっと寄り道して

帰ってくれたりして、ドンドン 仲良くなった。


 だからと言って、男女の関係にまではならかったんだけど。

私も 車好きだったから、車の話とかしていると すぐに時間が経つし。

 学校では タバコ吸っている事を、あからさまに出来なかったけど

そうやって 帰り、乗せてもらえた時とか 一服出来るのは、とても

うれしかったりして、楽しかった。


 卒業まで そんな感じでした。

卒業しても お互い、勤務場所が 変わった訳ではなく。私は家から

通うようになったし、T君も 方向的には、私の家の方角だったから

たまに、平日休みが合う時とかに 会ったりしていて。


 T君の車には パーソナル無線が付いていて、それが 面白そうだった。

たまたま 入院してきた患者さんが、トラックの運転手さんで その方が

「無線機余ってるから それあげるよ」

と下さったんです。それで 無線機の使い方を、T君に習って。

 私は まだ、車 持っていなかったから、家の屋根に 無理やりアンテナを

立てて、狭い範囲で やり取りしたりして。


そういう感じで


 Nさんとも 付き合っていたけど、Nさんは 土日しか会えないし。

土日も 私は、当直だったり、学校の日だったりしたから 会える日が少なく

わりと タイミングが合う、T君とも 一見すると、カップルみたいな感じで

付き合う様になっていました。キスもしてない仲なんだけどね。


 恋愛感情とかを超えた感じがして、意識した相手だと 話せない様な事まで

話せたりして、とても楽に付き合える人だったんです。


 この関係は 私が、結婚するまで 続きました。



 


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キナリ 1巻   密撼(みかん) @mecan

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