第20話 やらかした

 母親に叱られている 夢を見て、気まずい気分で 目を覚ました。


 Nさんが 私に腕枕をしてくれている。 ここは ラブホ。


 土曜に 家に帰り、日曜の間に 病院へ戻ると言って、夕方前から

Nさんと会って、そのまま ラブホでお泊りしたのでした。

 一旦 目覚めたけど、まだ 起きる時間では無かったので

ギリギリの時間まで 寝て。早朝に ラブホを出ました。


 病院前まで Nさんに送ってもらい。中に入って 鍵を開けて部屋へ。

すると D先輩が、既に 起きておられて

「あんた…」

と言ったとたん

部屋のドアが ノックされて、振り返って 少しドアを開けると

!!!

廊下に 父と母が立っていたんです。

えっ?!


 すぐに グッっとドアが開かれ、母が D先輩に向かって

「すみません」と 深々と頭を下げながら言っています。

 D先輩は

「あ、はい」と言いながら、内線の受話器を取って

「あんたが 帰ってきたら、先生が連絡しろって言ってたから」

と 内線ボタンを押している。

母は また

「スイマセン」 と、頭を下げている。


 状況が把握できてない 私は、ただ茫然と立っていて。


 先生も すぐ内線に応答したらしく

「院長室に来いって」

母が また

「すいません」と…


 私は 母に、廊下に引っ張り出され

「院長室 どこ?」

『 … ぅん こっち』


 院長室に入ったとたん 

パーンっ!

何っ??

父に引っ叩かれたみたいだ。

 その瞬間は 気づかなくて、父の 鬼の形相を見て、叩かれた事が

わかった位で、とにかく 何がどうなっているのか、わかっていない

そっちの驚きで、感覚が麻痺していた。

 それでも 咄嗟に 頬を押さえて、口を開けて 頬の内側を

舌で 痺れる感覚を確かめる様にしてた記憶がある。


 続けて 父が

「何で お前は」と 絞る様な声で、私に言う。

母は 終始、俯いていたと思う。


 そこへ 先生が来られた。


 両親が口を揃えて

「先生 すみません!」と

父が 私の背中を、下に押して

「先生に ちゃんと謝れ!土下座や 土下座!」


 訳がわからないまま… それでも きっと、無断外泊がバレたんだ

という事は わかってきていたので、その事を 謝れば良いのだと

理解して。

『すみませんでした』と 土下座した。

そのまま 頭を上げる事なく、ずっと 先生と、両親の話を聞いていた。

 いつも 日曜の間に帰ってきていて、帰ったら 連絡を入れる事になっており

その連絡が無かったので 院長夫人が、家へ確認の電話をした事で

この事が 知れたという事だ。

 両親も ひたすら、詫びの言葉を出していた。


 『これから もうしません』

と誓って、土日の帰りは 家の者が、付き添って行き来しますと

親が 先生に、約束し、それで 許してもらえた。


 院長室を出てからも 廊下で、コンコンと 両親から、小言を

言われて。仕事の時間になり 出勤してくる人もいたので、その時点で

父達は 帰りました。


 部屋へ入って 着替えをしていると、D先輩が

「お父さん達 夜中じゅう、ずっと 外に車停めて、待ってたんやよ」

と 教えて下さった。

 だけど 急展開な事が、あまりにあり過ぎて 何をどう理解すれば

良いのか わからない私は、返事も そぞろで…

 少し申し訳ないとは思ったけど、やはり ぼんやりとしていて

事の重大さが その時の私では、許容範囲を超えてしまっていました。

 そのまま 仕事に就き、学校へも行った。

 

 病院中に その話は伝わり、折角 少し皆とも 打ち解けて、仕事も

し易くなってきていたのに、また 白い眼に晒される様になった。

 当然の事をしたから 仕方ないです。


 それから 准看の学校へ通う間の、半年位だったかな?

土日は 必ず、家の者が 送り迎えをしてくれました。

 そうまでしてもらえてたのに 当時の私は、家に帰ると 誰とも、一言も

口をきかずに過ごして、ただ ジッと家に居て、時間になったら戻ると

言う感じでした。

 今 思えば、本当に 迷惑をかけたんだなと、反省して 申し訳ないです。


 常に 監視されている感じだったから。この事実さえ Nさんに伝え

られない状況でした。学校へ行く間位しか 自由な時間が無いので

日中 働いているNさんへ、連絡のしようがないんです。

 nちゃんに 伝えてもらうのも、恥ずかしかったし。手紙に書いて

送る方法で、何とか 伝えました。返事は 家の近所の、sちゃん家へ

送ってもらう事にしました。


 Nさんは 何とか時間を作って、学校の帰りの時間に 来てくれてたり

ゆっくりは 時間が取れなくなったけど。

 通信制の学校の日に 迎えに来てくれるとか、そういう感じで 細々と

続けていっていました。


 そんな事も ありながら、准看の資格は 取らせてもらえて。

准看でなければ、住み込みで 働いていなくても良くなり、卒業と同時に

家から通う様になりました。 


 

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