最初は「おいおい」と思いましたが、こういう状況に遭遇すれば、こうするよなぁ、と首肯する展開です。
そう言えば、以前に誰かが「冷たい方程式」をテーマに自主企画を催してましたが、本作品も応募作かもしれません。
「冷たい方程式」が好きな方は、森山智仁さんの「6分の2」と読み比べてみると面白いでしょう。理系崩れの私としては「6分の2」かなぁ。完全に個人の好みですけど。
星の数は、短編にはMAX2つが信条だからです。本作品は主人公の心情の移ろいを荒削りながら丁寧に描いていますし、この信条が邪魔しなければ、星3つ付けました。
他にも「冷たい方程式」をアレンジした作品がカクヨム界を漂っているのでしょう。私にとっては2作目の遭遇でした。
「冷たい方程式」のキモは言うまでもなく、一切の感情を挟む余地のない圧倒的な宇宙、美しいまでに圧倒的な数式であるわけですが、この作品ではそこにいくつかの「バグ」が発生します。
しかしそれもまた、宇宙という自然の中における自然な出来事であり、人の情動や愛と言った不確定要素を含んだ式はしかし、美しい解を提示する。
それは人の心もまた、宇宙の一部であるという作者のテーゼを感じるようでもあります。
性的な表現などもありつつ、そうしたひとつひとつを無駄にすることなく全て、たったひとつの解へと結びつく美しい構成。
「方程式もの」としてあまりにも秀逸な作品です。必読。
残念ながら、『命は平等である』という理想論は地上においてはもちろん、宇宙空間でも通用しない。資源が足りないことが一番の原因だろう。
途中過程はどうあれ、アストロノーツが誇れる職業であり続けることを願う。
本筋とは直接関係ないけれど、ここまで踏み込んだ性描写を書くのはけっこう勇気がいりますよね。特にWeb上で発表するとなると慎重にならざるを得ないですが、しかしこの作品は下品になっておらず、むしろ人間を描写するうえで必要な要素だと思われます。
色々情報をそろえた上で書かれているのが読んでいてわかりますし、読みごたえのある作品ではないでしょうか。