新たな日々 1

「百聞は一見に如かずっていうしね。とりあえず外に出てみよう」



ことばと同時、イブは扉に手をかけた。


扉の角度が徐々に開いく。


それに比例して外からもれる明かりもまぶしいものへとなっていった。


扉が完全に開ききったとき、俺はイブに手を引かれて外に飛び出していった。


久しぶりに聞いた「こん」という足音。


俺は視線を地面に落とし一面にコンクリート?が引かれていることを確認した。


そして、視線を一気に持ち上げる。


次の瞬間、全身を寒気が襲った。



「なっ、なぁ。イブ?・・・・あの・・・ずっと奥に見える巨大な城壁は一体なんだ?」

「ほら、なに止まってんのよ。そんなことはどうでもいいから足のほうに精神を集中させてみて」



あっさり無視されてしまった。



「何も考えなくていいから。今は足に集中して」



優しく微笑んでいるように見えるイブ。


しかし、その微笑みにはどこかぎこちないものがあるようにも感じられた。


いろいろ気になるところもあるが、とりあえず俺は言われたとおりにやってみた。


ちらばっていた糸がどんどん手繰り寄せられていくかのように俺の意識は強く発光を始めた靴へと絞られる。



「それで、剣を振るような感覚でじめんをけってみて」



みるみる軽くなっていく体。


というより、靴が体のことを持ち上げているのだ。


そして、言われたとおりに地面をける。


魂法エネルギー増加材に一歩を踏み出した瞬間、俺のレザーコートは風に大きく押されまるでマントのようにひらひらと背中でうごめいていた。


気が付けば建物が次々に後ろに下がっていく。


あまりの速さに脳の処理が遅くなってしまったが、どうやら俺は超高速で走っているらしい。


いや、走っているというより正確には滑っているようだ。


足を持ち上げる速度もおろす速度も変わっていないのに、なぜか地面を流れるように進んでいくのにはそういう理由があるのだろう。



「いや~、やっぱり早いんだね。そのシューズはねジェットシューズっていうこの世界の車みたいなものなんだけど原理としては靴から出た魂法エネルギーを魂法エネルギー増加材が増加し反復する。それが繰り返されて圧倒的な速度を発揮できるの」



俺が建物にぶつかりかけて、慌てて足を止めている時にスルーとイブは隣を通っていった。



「まぁ、速さの違いは瞬発力の違いと比例するらしいけど」



転びそうになる俺を支えながらイブはニコッと笑った。



「なんかな~。それって俺がイブより遅いみたいじゃないか」

「事実あまり変わらないでしょ」

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