第7話 ピンポン菊

久々の、昼間の休日である。

支払いに、赤いアーケードの商店街巡りをすると、これも恒例の花屋に寄る。


「おお、ヤマトじゃないか。相変わらず、ひょろっこいな」

ガッハッハ、と表するのが正しい笑い方で、腹を突きだしているのが、数少ない友人のダイスケである。

「ひさしぶり。これ、飲んでよ」

店で挽いてきた、コーヒーである。

本来は、ネルやペーパーで濾すべき物を、コイツは、茶漉しを使いやがるのだ。

そして、それがなかなか旨い。

なので、少し粗めに惹いた豆を、いつも、渡す。


「おお、ありがとう。今日は、そうだな。これなんかどうだ?」

指されたのは、黄色い丸い花だった。

「ピンポン菊ってんだ。菊だけど、カワイイだろ。」

デカい、ゴツい、強面のダイスケが、それはそれは優しい眼差しで、花を見る。

・・・柔道黒帯である。


「じゃあ、それ貰うよ」

「おお、宜しく伝えてくれ」

「サンキュ」

手早く包んでくれた、ピンポン菊を受けとる。

「おお、帰りに寄って晩飯、食ってけよ」

「判った。閉店手伝うよ」

「おお、ゆっくりしてこいよ」

ひらひら、と手を振られ、店を出る。


自然と笑顔になる。

ひらひら、と振られただけで、風がおきそうな、ゴツい手だな、とか。

必ず、先ずは、おお、と言っちゃうんだな、とか。


友人の温かさが心に染みる、墓参りである。







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カフェ&スナック【25】 ジム・ジムニー @Nonoka

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