第6話 おかゆさん

コトコトコトコト。

土鍋に細く火を当てて。


午前三時開店である。

真冬の丑三つ時は、ひたすら、寒い。

我ながら、良くもきちんと目が覚めると感心する。


二十五時間生活を始めてから。

或いは、それを自認してから。

一度も寝坊したことがない大和である。


午前三時から午後三時まで。

昼はさておき、前半は、数少ないであろうお客は、冷えきって入ってくるに違いない。


温かい雑炊か、おかゆさん。

昨日仕込んだ、鰹のサイコロ煮が良い色である。

梅干も十分ある。

おかゆさんだな。


コトコトコトコト。

優しく炊きながら。

風邪をひいたときの、心配そうな瞳を思い出す。

カラカラと氷の音を立てながら、冷えた指先で熱を測り。

ふうふうふう、と、おかゆさんを冷ましては。

口に運んでくれた人。


・・・父の温かさを思い出す、そんなヒトトキ。


・・・「寝かせとけば良いのよ!ちゃんと水分摂るのよ!」と、枕元に水筒を置き、さっさと寝る。

・・・母は、そういう人で、あった。


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