第7話 ノーベル賞のせいで「ロックが死んだ」と嘆く少女
彼がまさかノーベル文学賞を獲るとはわたしは思っていなかった。
特に彼のファン、という訳ではないけれども、ボクサーのことを歌った曲は何度も聴き、英語の歌詞を覚えようとした。
歌詞のリズムが耳にひっかかった。
意味は正直よく分からない。聞き取れてもストレートに心には入ってこない。日本語でないから当然だろうとは思う。
わたしが思ったのはつまりこういうことだった。
「ロックって、そういうもんじゃなかったはずだけどなあ」
曲が売れるのはとてもいいことだと思う。人生にその曲を必要としている人がいるってことだから。
売ったお金で慈善事業をやろうが、自分のための贅沢をしようが、それは人それぞれだ。曲そのものの意味や素晴らしさにはなんの影響もない。
けれども、ノーベル文学賞を受賞した、と聞いた瞬間、ロックというものがノーベル賞の選考委員に見下されたようなとても嫌な気分になった。
ロックの基準は人それぞれで十人十色だと思う。
わたしのロックの定義は次のようなものだ。
「”あいつら”、が絶対に聴かない曲」
あいつら、とは、人をいじめる嗜好のある人間だ。年齢も性別も関係ない。
決してあいつらが聴かない曲。それがわたしにとってのロックだ。
ノーベル賞で、”認められた”、と感じるようなものは、わたしにとってのロックではない。
裏・ノーベル賞 naka-motoo @naka-motoo
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