妹よ、君に会いたかった……

人間、知らないほうが良いことがある。
この物語は平凡な木こりが何を間違ったか聖剣を折ってしまい、その未曾有の大惨事から世界を救うべく、長い旅に出る話である。
三人の仲間、と言うか護衛がいるとは言え、危険な旅だ。
しかも徒歩。これはキツい。
しかし主人公の木こりはひたすら耐えて目的地を目指す。
たとえ道中、護衛のふたりがイチャイチャし始めても。
たとえもうひとりの護衛と会話が途切れても。
たとえ戦闘シーンでこれといった見所が用意されていなくても。
そんな精神的苦痛に耐え、旅を続ける(なお肉体的苦痛な展開はない)。
何がそこまで彼を駆り立てるのか。
理由はただひとつ。
イヤだと言っても無理だからだ(ぁ
かくして主にバカップルによる精神的苦痛に耐える旅が続く。
知らないほうが良かった、いや、むしろ積極的に知りたくはなかった結末に向かって……。

おそらく読者はこの旅の最後を見届けて、こう呟くだろう。
妹よ、ああ、木こりのセリフにしか出てこなかった妹よ。
世界の真実よりもキミに会いたかった、と。

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