その異能の力は何のためにあるのか?

今作の長野市役所ダンジョン課に勤める主人公・荒須イサナは「魔神の拳」と呼ばれる異能を持った特能者である。
本来備わっているものとは別の、その巨大な腕は、ダンジョンのモンスターたちをものともしない。
ミノタウロスが振り下ろす大斧を軽々と受け止め、逆にモンスターたちを圧倒する様は余裕すら感じる。
しかし、それ故かどこか冷めたところがあるように感じるのが個人的にはあまり好きになれなかった。
作中でもある人物が「どうしてその力はもっと有効活用しない!?」と憤っているが、自分ももっと「この力でダンジョンの脅威から長野市民を俺が護る!」みたいな熱さが欲しいなと思った。

が、実際のところ、彼は冷めているわけではなかった。
ただ、自分の異能の力が何のためにあるのか、何をなすべき為に与えられたのかが分からなかっただけなのだ。
物語のクライマックスにて、彼は「魔神の拳」の本来の使い方を知る。
その時の彼の熱さは自分を熱狂させるに充分だった。

この先にある彼と、長野市役所ダンジョン課の面々が織り成す物語を読みたいと切に願う。

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