ダンジョンは今や利権の最前線

役所務めの公務員とひとくちに言ってもかなり色々な部署があるわけで、彼ら彼女らが具体的にどんな仕事をしているのかはっきりとイメージを持っている民間の人はそんなに多くないのではないだろうか。

本作は「魔界の入り口」が発生した日本では行政がいかなる行動を取るかを題材としたシミュレーション作品である。
とりわけ面白いのは、ダンジョンから現れた魔物に対して警察や自衛隊が対抗するという方向性ではなく、ダンジョンをある種の観光資源とみなし、地方経済の活性化のためさまざまな企画によって運用していこうというところである。

ダンジョンという物理的な市民に対する脅威すら政治にとっては利権であり、衆議院議員の先生が、地元に利益誘導するために「箱モノ行政」のネタとしていっちょ噛みしようとしてくる様子はある意味で非常にリアルであり、そしてダンジョンものとしては切り口が新鮮である。

こんな感じで、現実でも我々の見えないところでさまざまなやりとりが行われているのかもしれない……。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=村上裕一)

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