透子さんはそこにいる

 主人公が出会ったのは、まるで透き通ったガラス細工のように美しい1人の女性。しかし、ガラスとは真逆に彼女はずっと心を閉ざし続けていた。そこには、タイトル通り自分自身の存在そのものを「記録」する媒体に自らを残す事が出来ない、と言う奇妙かつ深刻な特異体質があり……。

 自分が存在する、と言う証明すら困難であると言う辛い日々を過ごしていた彼女は、やがて献身的な主人公に惹かれ始めて行く事になります。例えその姿を「記録」には残す事は出来なくても、そこに彼女がいたという「記憶」は間違いなくそこにある……どこか切なくも暖かい、ちょっと不思議な恋愛作品です。
 この作品が多くの人々に読まれていく限り、間違いなく「透子さん」と言う存在はここに在り続けるのかもしれないですね。

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