最終話
桜はすっかり緑に染まって、梅雨の季節になった。
そんなぽつぽつと雨の伝う窓の内側に俺は立ち、外を眺めている。
__今日も将棋は打てやしない。
「なんだお前、たそがれてんのか?」
「コロすぞ」
「僕そんな怒ること言ったか!?」
「虚空に浮遊する半透明の物体が余にまとわりついて実に不快だ」
「湿度高いもんね~」
「しかもクソ暑いのにクーラーついてないんだもんなー、タヒにそう」
「こんなに暑いとワイシャツが張り付いてエ○くなりますね」
「誰かノーブラのやついねえのか?」
「控えなさい」
「そういえば、かりんさん、ラブコメ展開を期待してるとか言ってましたけど、そんなにラブコメ展開見たいなら自分がやればいいじゃないですか」
「そっ、そんなことできなわきゃねーだろー!?!!それに僕にはそんな相手いるわけ...」
「そういえば一人いるね~、仲良さそうにしてて、しかも部活一緒な同級生~」
「あ...生理的に無理」
「なんで俺急にDisられてんの?」
「でもうちは浩大くんのこと好きだよ~?」
「はあっっ!??!!」
「友達としてね~」
「だと思ったよ」
「だって浩大くんちょろ...やさしいもんね~」
「まさか今ちょろいって言いかけたか?」
「...」
「おいっ!言いかけたわけないよな!な!?(泣)」
<おととい>
「桜田さんのことが好きです」
「...はっ?!」
「.....と、突然すぎますよね。冗談にしか聞こえないですよね。変なこと言ってすみません。なかったことにしてください」
「...なかったことになんかできっかよ」
「え?」
「お前が覚悟決めて言ったんなら、なかったことになんかできるわけねーだろ」
「でも、桜田さ...」
「浩大でいいよ」
「え...じゃあ、浩大、さん」
「なんだよ」
「関係が壊れることにはならないでしょうか」
「...少なくとも俺は壊さない。そのつもりだ」
「大戸」
「玲菜でいいです」
「...玲菜、さっきの答えだが」
「ええっ!?今ですか!!?」
「早い方がいいだろ?」
「そ、それはそうかもですが心の準備が...」
「そのくらい最初にしとけ」
「ぐさっ」
「俺は、お前と付き合うとか、そういう関係になることが考えられねえんだ」
「...」
「だから、今まで通り、ふざけ合える友達じゃいられないか?」
「...わかりました」
「このことは他の奴らにはオフレコで頼む」
「もともとそのつもりです」
「じゃ、明日からも今まで通り接するってことで」
「はい」
「じゃあな」
「また明日」
...
...
「ふっ、うぅ...グスッ...ううぅぇ...うぅぅあぁぁああああああっ....」
<今日>
「...」
「外なんか見てて楽しい~?」
「...さあな」
「もしかして、おとといのこと考えてる」
「!!?」
「大丈夫、玲菜ちゃんから聞いたわけじゃないよ~」
「こやつ、とぼけた顔してやりよる!!」
「怒るよ~」
「気にしてちゃ前に進めないよ~」
「それはわかってんだけどなー...」
「ほら、すみれちゃんがトランプ始めたよ~、入ってくれば~?」
「....え?誰?」
「すみれちゃん、新入生の子~」
「あいつそんな名前だったのか!?(そういやあ今まで名前呼んだことなかった)」
「お前らなあー、いい加減囲碁将棋やったらどうだ?俺が教えてやっから」
「えー、めんどくさいー」
「あのなあ」
「それよりもエ○マンガ読みましょう」
「だからなんでそうな...って俺以外はみんなそれを望んでるんだったなうん。つらい」
「お前も一回読んでみりゃいいじゃん。そんな卑猥な目で見なくても、僕らと話し合わせるためだと思ってさ」
「卑猥な目ってどんな目だよ」
「そうですよ。一度覗けば引き込まれますよ」
「個人差はあると思うのだが」
「さあ、魔導書を開き隔離世への扉を開くのだ!」
「いやだ」
「...わかったよ、一度だけだぞ」
「おお、お前まじか!」
「浩大くんも仲間だね~」
「ただし、俺がこいつを読んだら、お前らも囲碁将棋をやれよ!いいな!」
「よろしくてよ」
「いいでしょう」
「ああっ...直視できない...」
「そのうちくせになってきますよ」
「じゃあお前ら、囲碁将棋...」
「次はこれを読もう」
「っておい!!」
「え~?そんな約束したっけ~?」
「お・ま・え・らーーーーーっっっ!!!!」
__なんて言ったが、こいつらが囲碁将棋をやるつもりなんかないってこたあ最初っから分かってた。
俺は東条や柳、新入生やもちろん玲菜とも、もっと中を深めていきたい。
囲碁や将棋なんかより、大切なものを見つけたからだ。
俺らをつなぐものが下ネタっていうのは聞こえが悪いが、それでも俺らはこいつらとつながっていたいと思う。
囲碁将棋なんてそのうちやっていけばいい。
「今日のパ○ツ何色ー!?___」
ほらも今日もまた始まった。
囲碁将棋部?何ソレ美味しいの? 完
囲碁将棋部?何ソレ美味しいの? 前花しずく @shizuku_maehana
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます