第18話 再生。
僕は目覚めた。
自分が今、何をすべきかは分かっている。
迫ってくるミサイルを止めるのだ。
製造プラント内のハンガーから出て翼を展開し、天井の穴から外へ出て急上昇して空に上がって、ミサイルを目視すると、胸部パーツを展開して内部に搭載されているビーム砲からビームを放射して、ミサイルを散り一つ残さず完全消滅させた。
予備施設への脅威の排除を終えると、高速飛行で楽園へ向かった。
バベルを視認できる距離に到達するなり、塔全体からビームやミサイルが発射された。内部に居る時に入れない部屋が多数あったのは、武器を隠す為だったのかと納得した。
攻撃を回避しながら右拳にパワーを充填し、電撃が迸り眩い光を放つまでになったところで、バベルの頂上部へ急降下して、拳を叩き付けた。
轟音と共にめり込んだ拳から放出された膨大なエネルギーが、バベル全体に行き渡ると同時に各所で爆発が起こり、爆音と振動を立てながら崩れていった。聖書の記述にあるように、バベルと名の付く塔は雷の力によって崩壊したのだった。
その際に、森林から多くの鳥達が飛び立っていった。突然の事態に驚愕したのだろう。
「レギオン、オマエトハワカリアエルトオモッタ」
崩れたバベルを見ながら独り言を言った。なんだか声が重たい気がした。
瓦礫をスキャンして、稼働している箇所が無いことを確認すると、体の向きを変えて、予備施設に戻った。
「イマノボクノスガタヲミセテクレ」
「了解」
着地して最初に目にしたのは、ウェルギリウスが表示した僕の全体図の映像だった。
デザインはサタンと同じだったが、白銀一色で黒に塗られている箇所は一つも無いので、違う印象を受けた。
「ソウカ、イマノボクハコウイウスガタナノカ」
両手を上げて見てみると、内部が機械で構成され、外側を装甲で覆った両手は、僕の思い通りに動いた。
「コエガオモタイノハドウイウワケダ?」
「ヴァルドルの音声機能が低く、その為重たくより機械じみた声になっているのです。元々会話用の機体ではないでの無理もありません。今から改良しますか?」
「イヤ、イイ」
今の僕は、クローン兵でも人間でもないのだ。
手を降ろすと、パーツマンと呼ばれていたクローン兵の死体が目に入った。僕の記憶と意識の大元の存在だ。
僕はなんなのかというと、パーツマンがジョン・ファウストに倒された際に二番手として開発していたサタンと同型のヴァルドルという機体の思考回路に彼自身の脳の一部を使うすることで、記憶と意思を保持しつつ機体を制御するという世界で唯一の意思を持つ機動兵器なのだ。
死体を左手で拾い上げ、サーモスキャンをかけると、熱は一切発しておらず、確実に死んでいることが分かった。
顔は、目と口を閉じた無表情だった。
「カレハ、マンゾクシテシネタノカ?」
「私には、死に対する満足度を計ることはできまえん」
「ウェルギリウス、オマエニトッテシトハナンダ?」
「死を停止と規定するのなら、私の場合、機能の完全な停止にあたるでしょう」
「ソウカ」
「クローンの生成が終わりました」
「ココニツレテキテクレ」
「了解」
少しして、製造プラントに一組の全裸の男女が入ってきた。
「僕達はなんだ?」
男の方が質問した。女の方は、男の右腕を掴んだまま背中に隠れ、僕を見ようとさえしなかった。
「ニンゲンダ。キミノナマエハ”アダム”、ソッチノオンナハ”イヴ”ダ」
それぞれを指さしながら名前を付けていった。どちらも聖書に出てくる有名な名前だ。
「これからどうすればいいんだ?」
「スメルトコロニツレテイコウ。テニノッテクレ」
言いながら右手を差し伸べたが、恐れて乗ろうとはしなかった。
「シンパイナイ。ボクヲシンジテクレ」
再度の呼び掛けに、アダムは恐る恐るといった感じに足を進め、イヴは引きずられるように付いていった。
「シッカリツカマッテイロ」
潰さないように慎重に右手を閉じ、二人の安否を確認すると、ゆっくり飛び上がって予備施設から出て行き、その際に両足からミサイルを撃って、予備施設を再び砂漠で覆った。この施設は今の人間には必要無いからだ。
低空かつ低速飛行で移動している中、理想郷の跡が見えてくると、パーツマンの死体を落とした。彼を生まれた場所へ返したのだ。
楽園が近付くと、大多数の移動物体が見えた。それは外へ出て行くと外獣を含む動物の群れだった。彼等もヤハウェの制御から解き放たれたのだろう。
バベルのあった場所に着地して、二人を降ろした。
「ここはどこだ?」
「キミラガスムバショダ」
「何をすればいい?」
「ハンエイスレバイイ。ウメヨ、フエヨ、チニミチヨトイッタトコロダ」
「あなたはいったい誰だ?」
「ボクハヴェルドル、イヤ、”パーツマン”ダ」
完
パーツマン ~1000万体目の強運~ いも男爵 @biguzamu
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