第10話 終章 決着

 屋上に魍魎獣をおびきだした俊介。

「光呪っ!」

 俊介の口腔から光の束がほとばしった。

 浮遊する雑霊を消滅させて魍魎獣に突き刺さる。

だが左鏡・魍魎獣は、いささかのダメージも受けてはいなかった。

「くそっ、効かないのか!」

 俊介に驚きの表情がひろがった。


「くだらない術だ」

 言い放って両腕を鞭のようにおどらせる。

 鋭い爪が俊介を襲い、顔面をとらえたかに見えたが、1㎜もくいこんではいなかった。

「むっ」

 みるみる俊介の髪の毛が逆立ち、隈取りが皮膚の下から浮かび上がってきた。

「鬼神被甲法」

 俊介はにやりと牙をむいた。


「ぐおおっ」

 魍魎獣が俊介を乱打する。

 鎖帷子まで切り裂いたが、全身に刻まれた梵字が鎧のように守っていた。


「引導をわたしてやるぜ」

 俊介は背後から刀を抜いた。なんと木刀である。

 魍魎獣いや、左鏡がうめいた。

「木刀だと?」

「御神木から削りだした霊刀ステレンキョウ」

 ニーッと笑う。どこまで本気かなのわからない。


両者が交錯する。

俊介が魍魎獣を突き抜けた。

「きさま何者だ!?」

「美少年タレント内刃俊介」

 気のきいた冗談を言ったつもりらしい。



「うげーっ」

 スタジオでは左鏡が、口から血を吐き出していた。


 女性スタッフの悲鳴があがる。


 その血のなかでは尸虫がうごめいていた。

『ギッ!ギギッ』

 鉤虫という寄生虫に似た尸虫が、気色の悪い声をあげた。

 穂村がすかさず焼き殺す。



『深夜番組、大騒動』

『幹事長は心臓発作で重体』

『宗教学者、左鏡氏は寄生虫病で死亡』

 新聞の見出しがおどる。


「幹事長は再起不能のようだ」

 ソファで新聞を読む由香里に、穂村が教えた。

「悪行のむくいね」

 由香里はこともなげに評した。


「うひゃー、ごめん、ごめん、また遅れてしまった!」

 息せき切って飛び込んでくる俊介。


「罰として、下水道の悪霊祓いは、俊介ひとりにやってもらいましょう」

 天禅老師がにこやかに命じた。


「えーっ」

「これも悪行のむくいね」

 由香里をまねる瞳だった。 終わり


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ディバインフォース 伊勢志摩 @ionesco

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