”55本のナイフ”と”二人の王子の記憶”を胸に乙女は荒野を駆ける

クリスマスの夜、突如村を襲った暴漢たち。
不思議な黄色い炎に包まれて灰燼と化していく村。
そんな中から主人公の少女を救ったのは、二人の”灰かぶりの王子”だった。

時を経て、家伝のナイフと二人の王子の記憶を胸に、女性ばかりのサーカス団を率いて荒野を渡り歩くようになった彼女。
荒野を生きるのに必要なのは男も女も同じでタフな精神と腕っ節。
サーカスを襲った闖入者をつまみだそうとした彼女は、ふとしたきっかけで”同じ顔を持つ義賊と執政官”の争いに巻き込まれてしまう。

今も鮮やかな王子たちの記憶。
数奇な運命に翻弄される二人の同じ顔の男。
張り巡らされた罠、謀略、そして彼らを待ち受ける運命は、決闘。

運命を切り開くのは、彼女の胸の”55本のナイフ”!!
これぞ、女ウェスタンの最高傑作!!



とまぁ、これくらい気合の入ったレビューを書きたくなるくらいの傑作でした。
え、これ、「女性向け」なの? タグ書き間違えてんじゃないの作者さん?
男でも普通に面白い。むしろハリウッド映画とかにしても映えそうな出来栄え。
圧倒的な名作感に僕もうちびりそうですよ。

以下、ネタバレ。

文章力、構成、描写やキャラクターメイク、台詞に至るまで非の打ち所がない完成度。
唯一突っ込むならば、なんで舞台を「和風」にする必要があったのか、というくらい。
けど、それもどうでも良くなるような没入感はまさに『エンタメ』の一言。

女主人公のナオミはもちろん、彼女の後見人のクルップ爺さん、憂いを帯びた美女のソフィーと、キャラクターが実によく動く。そしてどいつもこいつも魅力的。キャラが立っている。
最たるのは二人の王子たち。
かたや、義賊として夜空を舞う「南部峯益荒男」。かたや、征督府長官として人類の楽園を守護する「南部峯憲治郎」。
二人の因縁、そして対決、どこを切り取っても絵になる。かっこいいの一言。
こういうの嫌いな男子は居ないと思いますよ。たぶん。

今回のコンテスト参加作品の中で、私が読んだ限り五本の指に入るんじゃなかろうか。
暫定トップと甲乙つけがたいなと悩むほどの名作でした。
第二部を期待しております。

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