第28話 営業と戦え

※ これ、ヤバイかもなー。と思いつつ……


 社内で飲み会があった。俺は魔法使いプログラマと話すのは好きだから、なるべく参加することにしている。

 他の職種とも交流を深めるべきだろうが、そうはいかんのだ。


 我々が楽しく技術談義していると、営業が、こともあろうに俺に絡んできた。


「お前ら魔法使いプログラマは営業をバカにしているんだろ?」

営業なら尊敬し尊重しているが?」


 事実、ちゃんと知識があり、分からない所を相談に来るようなまともな営業もいる。

 むしろ、現場のミスを上手く調整してくれる人もいるのだ。


「まともって何だよ。俺らが取ってきた仕事をこなすだけで給料をもらってるやつらが。文句を言わずに魔方陣を作ってれば良いんだよ。お前らの代わりならいくらでもいるしな」

「原価割れするような仕事を、顧客のニーズもまともに把握せずに丸投げしてくる営業こそ、不要だと思うが?」

「お前ら魔法使いプログラマが上げてくる見積りが高いんだ! 人件費なんぞサービス残業でもして抑えろよ!」

「探せば無給で働いてくれる魔法使いもいるんじゃないか? 仕事内容が実験的または先進的で知識欲を満たしてくれるものであれば、だがな」

「じゃあ、そんな案件をお前が取ってこい!」

「分かった。貴様は自分の仕事を放棄するわけだな? 良いだろう。では俺が仕事を取ってくるから、貴様が作れ。もちろん、俺と同等以上のスピードとクオリティでな」

「無理に決まっているだろう」

「そうか? 貴様は『やれるものならやってみろ』というつもりで先程の発言をしたのだろう? その挑戦を受けてやると言っているのだ。そうか、貴様は己の言葉にすら責任を持たないんだな? ならば客に信用されなくて当然だ。信用されないから極端な値引き以外で仕事が取れんのだろう。まずは適当に回る口を矯正するところからやってみると良い。そして二度と俺に関わるな」

「なんだと!」

「ちなみに、先程言った通り、貴様の代わりは俺でもできる。俺の代わりは貴様ではできない。さて、どちらが不用品だ?」

「……」


 この営業が言ってはいけなかったことが二つ。


 『お前らの見積もりが高すぎる』

 これは、前提条件やリスクが曖昧だと、どうしても高くなる。

 安くさせたかったら密に要件や仕様を詰めて来るべきで、「理解できないんでコレで」などと振られれば、こちらはリスクを考えた見積もりになるのが当然。そうすると、必然として我々の見積もりは高くなる。


『なら、お前が仕事取ってこい』

 だいぶ勘違いされているのがここだと思う。

 我々魔法使いプログラマには、確かに他者とのコミュニケーションを苦手とする人間もいるし、作ることにしか興味のない者もいる。しかし大抵は、顧客の、それも現場担当などと仲良くなることも多いのだ。

 よって、そこで別の問題を発見することが多々ある。そしてそれは、正直ビジネスチャンスとなるのだ。

 雑談で話していた内容で、「では、そっち方面の解決策を一緒に考えませんか?」で一本仕事が増えるわけだ。

 ただ、こういう風に増えた仕事は、信頼している人にしか回さん。先の営業には無理だ。ならば、知っててビジネスにしてくれそうな人。俺で言えば上司さんに回すこととなる。


「上司さん、こんな問題があるようです。ソリューションの提案、上司さんに『よろしく』で良いですか?」

「多分ハルにブーメランだけど、受け取っておくよ」

「はあ……。痛くない整理されたプーメランして下さいね」


 こんな感じだ。


 営業職は確かに必要で、コミュニケーションやお金の勘定をやってくれる。

 不要なのはソリューションじゃなくて己を売りたい営業。そんな営業が使えるのは、浅い知識と、本当にあるかどうか分からない人脈になるわけだ。

 実にくだらんし、巻き込まれたくはない。


 俺に話を持って来るなら、利害関係やステークスホルダを明確にして持ってきてくれ。

 俺はそんな営業とは揉めない。



※ 流れ的にそろそろ物語パートなんだけど、涙と吐き気で進んでおらず。もうしばしお待ちをm(_ _)m

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