闇の中の報道

九月二十日 東京都某高層ビル最上階



{一昨日9月18日午後4時半ごろ、東京池袋付近の廃ビル2階で、男性の叫び声が聞こえたとの通報がありました。しかし現場には遺体はなく、同日東京インフォ記者が行方不明になっており、記者は朝倉誠という男性に取材をしに

行っていたと警察の調べにより分かりました。警察は2つの事件の関連性を―――}



「さすがだねぇ、片桐くん。」

腕を組み、微笑む青年――片桐千里をニヤリと見ながら口を開く、朝倉誠。



「しかし・・・私の名前を使うというのは・・・どうだろう。」

広すぎる窓からは美しい夜景が見え、部屋の中はあまりにも整頓されすぎている。

高級そうな真っ黒なソファに向かい合って座る二人の男。

男たちはテレビを見ている。

「はは、すみませんね。名前まで報道されるとは思っていなかったので。だけど、偽名ですよね?」

真剣には謝罪していないのか、微笑んだままの青年は思った。

――まぁ、報道するように言ったのは俺なんだけど。

「へぇ。面白いことを言うんだね、しかし残念だ、私の名前は朝倉だよ。」

「―――そうですね、今はそういうことにしましょうか。」


男―朝倉が発する空気を感じたのか片桐はそれ以上模索するのをやめた


「ハハハしかし君は本当に読めないねぇ。面白いねぇ。今度食事でもどう?」


「お互い様ですよ。気が向いたら行きましょう。」


会話だけなら雇人と雇われ人という風だが、

もしもこの場に二人以外の者がいたならばこう思うだろう。

――まるで相手の隙を探しているようだ。


そしてこうも思うだろう。


『この二人とは絶対に関わってはいけない』と。




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同日―――



朝倉と片桐が高級ビルの最上階で談義している頃




都内某所




「へーえ!やっぱり関わっちゃいけない人種っているんだねー!私そんなの二次元だけかと思ってたよ!」


「いや、噂だけどね・・・それも誰が流したのかも分からないし」


底抜けに明るい声色で話す美少女と、その相手をするどこからどう見ても平凡な少女。

場所はBCBハンバーガーショップ店内であり、彼女たちの他にも客がいるが―――



「ていうか、ねねちゃんポテト食べすぎだよ・・・・・・。」


平凡少女こと――坂嶺かをる。

彼女の前には大量のポテトの山と美少女。



「目立ちすぎ・・・・・。」


何より目立つのが嫌いな彼女は深くため息をついた。





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