E-堕ちる

「俺と共に、堕ちろ」



 ゴルベット隊長はそう言うと、薄布で作られたわたしの下着を片手で引き裂いた。

 乱暴なその行動なのに、胸はときめくように鳴る。


 薬の副作用なんかじゃない、と、思いたい。



「堕ちろ、ってどういう事よ」


 全身に回った熱を加速させるように、彼の手がわたしの素肌を撫でる。

 頬から首筋を撫で、肩、そして胸の膨らみをその大きな手で包み込み、ゆっくりと揉みしだく。


「お前の体は小柄だが、大丈夫だろうか……」


 大丈夫ってなにが!? え、もしかして結合部のサイズ的なこと?

 体格差を心配する前に、することがあるわよね?


「ねぇ。もしかして、媚薬にヤられたから。手っ取り早く、身近に居る女に薬を飲ませて、なんとかしようとしてるわけ?」


 熱い息の下から、なんとか声を絞り出せば。わたしの胸を凝視ししながら揉んでいた彼の視線がゆっくりと上がり、わたしの視線を捉え真剣な顔をする。


 なんで、こんな時ばっかり、そんな顔するのよ……っ。



「そんなわけはないだろう。お前だから、飲ませたに決まってる」


 真顔で言われて、思わず言葉に詰まる。


 真顔で言っているのに、その手は胸を揉むのを止めない。どういうギャップよ? 理解が追いつかないわよ、ひとことでいうなら サイテェ よ。


 とはいえ……薬を盛られたわたしの体は、心とは対照的に……いや、心もちょっと絆されてないこともない、かもしれないけど。


「あ……っ、や、ああん」


 それなりのサイズを誇る胸を、やわやわと揉みしだき。さり気なく乳首を人差し指の腹でクリクリと撫ぜてくる。


 弄ばれる乳首から、ゾワリと走る快感に背中を浮かせれば、彼は唇をひと嘗めして野獣の顔を取り戻す。


「ちょ、ちょっと待ってよ! ドア壊れてるし、真っ昼間っ!」


「大丈夫だ、お前の今日の仕事は、俺の相手だ。この部屋に至る通路の入り口は俺の剣を突き立てて塞いである。俺を敵に回すような馬鹿は、ここには居ない」


「じゃ、じゃぁ、あなたは! 隊長の仕事、あるでしょっ!」


「俺の今日の仕事は、あの薬の被験体になることだからな。後で、詳細な報告書を書けば問題ない」


 そう言ってニヤリと笑う。


「しょ、詳細な報告書、って。まさか、このこと、書くわけじゃ……」

「書くに決まってるだろう。お前の痴態を、一つ残らずな」


 舌舐めずりをする男に、戦慄する。

 それじゃ報告書じゃなくて、エロ小説でしょうがぁっ!

 詰りたい口を、彼の唇が覆い隠す。


「ん……ぐっ」


 熱く長い舌が口腔に侵入し、わたしの熱を持った舌に絡みつく。

 歯茎の裏をねっとりと舐め上げ、誘い出した舌を吸い上げる。

 何度も顔の角度を変え、熱心に口づけされ……口の中も、性感帯があるのだと教えられた。


「はぁ……ん」

「お前の唇は蜜の味がするな」

 それは、さっき飲んだ異常状態回復薬の味よ。


 頭上で拘束されていた手を解放される。彼は自由になった両手でわたしの両胸をやわやわと揉み拉き、膨らみを強引に真ん中に寄せると、すりあわせた両乳首を舌先でぺろぺろと舐め、口に含み吸い上げる。

「やっ! あっ、あんっ」

 強い快感に、びりびりと体が震えるわたしの両足を割り広げた彼は、マウントポジションだった体をわたしの足の間に移動させ、その体でわたしを押さえつけて、執拗に胸を愛撫する。

「やぁっ、だめっ、駄目だったらっ、んっ、んんんんっ!」

 駄目なのに、媚薬のせいで気持ちよすぎて、辛いのに。背中がしなり、まるで彼に胸を差し出すような体勢になってしまう。

 胸だけでイキそうになった途端、愛撫していた手と口が離れてゆく。

 放置された絶望感に、荒い息で閉じていた目を開ければ。

 わたしの開いた両足の間で、彼がストリップして……いや、服を脱ぎ捨てていた。

 彼はわたしが自分を見上げているのを認めると、にやりと笑い全裸になる。


 筋肉の浮き出る引き締まった肉体に、数え切れない古傷が散っている。


「ゴルベット隊ちょ……」

「無粋だな。名で呼べ」


 色気を垂れ流すような、低い声で強請りながら、わたしの上にのしかかってくる。


「……っ。フィリウス……っ」

「ああ、そうだ」

 精悍な顔で、嬉しそうに笑うから。



 悔しいけれど、拒めない。拒める訳が無い。



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