ひとりの女性が、愛を貫く享楽と悲哀を描いた物語。
昔話風にアレンジされておりますが、決して “ のんびりほんわか ” としたお話ではありません。
一途に愛を持ち続けながら、一方ではそれゆえの背徳心が癒えない傷のように痛みを与え続けるさまが、見事にひとつの作品として著されております。これは神が知恵と引き換えに、人間のみに与えたもうた試練なのかもしれません。
タイトルの「しろぎつね」。非常に意味深な表題です。しろぎつねは美しき娘に何を残したのでしょうか。何のためにそうしたのでしょうか。
解釈は読み手次第です。考えるほど、奥の深いこの物語。読む時間よりも、その後に去来する思いを自身と語り合う時間のほうが長いのです。
この「しろぎつね」をご覧になって、ご自身と語り合ってみられたらいかがでしょうか。その時間は決して無駄にはなりません。