魔法のコインが、夜空にきらめく星となる。

物語を中盤まで読み進めて、
何が起きたのかを理解して、私は泣いた。
情けなくて、悲しくて。

それほどまでに感情移入していたのだ。


この作品の魅力は、主人公とホームレスの掛け合いにある。
特に、ホームレスの語り口調が個性的だ。どこか愛嬌があり、人の心をつかんで離さない。

この人は相当頭がいい。度胸もある。
私なら、この場面でとっさに「この財布、●●●か?(※ネタバレ防止)」とは言えない。

読めば読むほど、会話に引き込まれてゆく。

本文の二行目のセリフが、とくに巧い。
このセリフを読んで「ええっ、なんでだよ」と思ったときにはすでに主人公に感情移入している。
このセリフがあることで、一気に「二人のセリフを傍観する読者」ではなく「主人公目線」に立たされる。

だから、五百円玉の描写もシンプルなのに、本当にキラキラして美しく感じる。
星が落ちてきてコインになったという話にも、心をくすぐられる。

人によっては主人公をあざわらう人もいるだろう。
感情移入する私を馬鹿にする人もいるかもしれない。

でも、ヒロインの言葉と、ラストの主人公の言葉で気付く。
そう、この物語は「そういうふうに」楽しむのが、たぶん正しいのだ。
感情移入して、ワクワクして、ちょっと泣いて。

そして最後に思うのは、やはりこのホームレスが元気に暮らしてくれるといいな、ということである。

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