草原と風、遊牧民、夜と夢、狼の異類婚姻譚。これらの言葉に惹かれる方に、ぜひとも読んで欲しい物語です。
ハワルをとりまく環境から、シンデレラを想起する方も多いのではないでしょうか。冷遇する母親、懸命で献身的な少女、そして結婚の話。御伽話と違うのは、その結婚の相手がどうやら彼女を幸せにするような相手ではない、と読み進めて行く中で不安に思う所……。
どうなるのか、とドキドキしながら読んでいくうち、出会うのが「狼の王」です。夢での逢瀬と約束は、暗い夜空にさっと風が吹くようでした。眩い、というよりは、手の中の灯りのようにじわりと温かく、希望を感じる。
物語の幕の向こう。ハワルと「狼の王」が寄り添い、いつまでもいつまでも幸せに暮らしてくれましたように、と。それを信じる気持ちで、いつもほっと読み終わる物語です。
中央アジアを想起する草原の民の物語です。
継母に冷遇され、意に沿わぬ結婚の約束をさせられ、自分の幸せを諦めかけていた少女が、夢で出会った狼の王と結婚するまでのお話。
少女の境遇があまりにも不憫で涙をそそられます。早く幸せになって!と祈らざるを得ません。
結婚の話が出た時も、これで今の生活から抜け出せるのかな、シンデレラストーリーになるのかな?と思いきや、ぜんぜんそんなことはなく……
もうほんと誰か助けに来てくれ……と思っていたので、ラストシーンはほっとしました。
狼の王、かっこいい。
そうとははっきりと書かれていませんでしたが、私にとってはこの話はラブストーリーです。ハワルが夢に見た『王子様』が来てくれたように感じるんです。
めでたしめでたし!で終われてとておよかったです。
ユルト、スーザニ、蒼き狼と、テュルク民族を連想させられる単語・モチーフがたくさん出てくるので、そのあたりが大好きなひとにもたまらないと思います!