凄まじい話ですよ。途中でやめずに一気読みすることをおすすめします。
はじめは、「絶対に恋愛に至らない相手としか結婚できないなんて、そこに生きる楽しみはあるのかな?」と思いながら読み始めました。
しかし、主人公の仕事や友人について、主人公が事実と感想を・見解を淡々と述べていくのを眺めるうち、自分の中でも価値観がシフトしていく(この世界に適応していく?)のを感じます。
常に理性的・合理的だった主人公が、物語の終盤で、怒涛の展開を見せます。
驚きと納得が入り混じる、不思議な感覚。
お見事としか言いようがない、★3つでは足りない作品でした。
SFに分類されていますが、サイエンス・フィクションではなく、ソサエティ・フィクションです。科学が苦手な方も是非どうぞ。
司法書士ならぬ婚姻書士という職業が生まれる社会背景を見事に設定しています。その逆転の発想と緻密さは、サイエンス・フィクションのそれです。
配偶者との性行為は不倫で、恋愛したければ非配偶者としろ。この設定が斬新で、展開される物語も地道で秀逸。(他のレビューワー同様、作品紹介文に明記されているので、気持ち良くネタバレ的なコメントが出来ます。作者に感謝)
短編にはMAX2つが信条ですが、星3つ付けました。
(閲覧者へ)
作者の「不法就老」もお勧めです。奇抜な設定で社会を鋭く抉る処が似ています。淡々として落ち着いた雰囲気の本作品とは異なり、もっと陽気です。双方の雰囲気を比べてみるのも一興です。