黎明の遠き“夏と夜”を縫い付ける縛鎖――今こそ“定命”の楔を打ち払え!

濃密で詳細な物語の顛末。そして仰々しい舞台の存在が冒頭で提示されます。
先に続く物語からは、情景と小道具の質感に対するこだわりが見て取れました。この事から、前述の舞台に対する期待が高まります。

独特の生々しさと、事象を雑多に捉える視点は、
ダークで退廃的な舞台を構築するのに、必要不可欠な素養である事を知っていたので、この描写力がもしも、
現実見のある舞台ならではなく、非現実な舞台に活かされたらどうなるのだろう、と――期待を否が応でも高めます!
何気に自分の好きなガールミーツガールらしい走り出しでウホホイと歓喜!

更に喜ばしかったのは、多重に騙しを利かせた彼女のキャラクター造形でした。
掴みどころのない所作と、時の積み重ねを思わせる出で立ち、仮面の存在によって謎の奥行きを演出させ、尚且つ――
<チカ>という意味合いを幾多にも派生させた、語句に富んだ遊び心の方向性が、以上の要素と見事に合致させて強固なパーソナリティを形成しています。こんなん惚れてしまいますわ!

視点を一般的な感性の持ち主であるちやちゃんに置いて、読者の共感を引き出す造りになっているのも良かったです。
突飛で独りよがりな中二モノに見せかけてその本質は、計算高い綿密なファンタジーですよコレは!
あと<暗黒微笑>という懐かしいスラングにはフフッとなりました。ではまた、本日もおつかれさまです!

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