一言で言うと良質なロードムービーを見終わったような満足感

以前ルーマニアとスマホに打ち込んだとき、幾つかのページが見つかり、東欧の楽園という言葉が目に入りました。添付された画像もあまりに美しく、旅心をくすぐります。

しかし現在はEU加盟国で美しい自然と中世の面影を今も残すその国の、私が抱くイメージは決して明るくはないのです。
もう三十年以上も前のルーマニア革命をリアルタイムで観ていた私には、どうしてもあの頃見てしまった映像ばかりが記憶に強く残ってしまっていて。

それでも読み出したら、物語に引き込まれていきます。二つの母国を持つ主人公の、どちらの者にも成り切れない悲しみと寂寥感。

誰も悪くなかった。あの頃はそういう時代だった。
そう思うしかない、耐えがたい現実。
国や時代は関係なく、過ぎた者は戻りません。当然時間も止まらない。

酷い現実に残された人々は、恨みも悲しみも飲み込んで。苦しみを抱えながら、それでも良い方向に向かって、ただ自分を信じて進むしかない。

そう考えさせてもらえる良作です





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