生き物たちへの深い愛情や深い知識を、獣医の筆者が綴るエッセイです。
この「もふもふ日記」に出会った時は、まだ連載中でした。八十八話も書かれているのに内容のバリエーションも、登場する生き物も色とりどりで、一体何種類の生き物たちが登場してきたのだろうと今思い返すと驚きます。一話だけでも十分読み応えがある上に、爽快でしっかりとした筆致は読みやすく、当時は更新を心待ちにしていました。
最初に「エッセイ」と書きました。でも違ったのです。最終話を読み終えた時、これは一つの長い物語だったのだと気づきました。この作品自体が、ある日、生まれ、そしてある日、生を終える、生き物そのものだったのです。
2017.5.5
ある時はそこいらで動けなくなっている小さな生き物を拾って世話をし、ある時は辛い別れを冷静に受け入れる。
手厚い看護も重大な選択も、全て優しさからきています。
馴染みのある生き物から「そんなのまで!?」と、愛を注ぐ対象の幅広さだけでも面白いですが、その対応がまた……(笑)。
『ボランティア』精神の塊なのに、押し付けがましいところは一切ありません。
保護して回復したら自然に返したり、或いは別の保護者(飼い主と言いたくナイ)さんに譲る際はちょっとドライかもなんて思うこともありますが、それも深い深い愛ゆえ。
向かい合った命ある存在にとって、何が一番かを考えた結果を笑顔で受け入れる姿勢に胸が熱くなります。
カリフォルニア在住の獣医さんが、様々な生き物との触れ合い…よりは深い付き合いを描いたエッセイ。
ヒトとナメクジ以外は何でも好きなような作者だが、実は人からは愛されているのではないかと感じる。
傍若無人な人物として描かれているが、同居人たるジェイさんや、同僚の反応を見るに。
そう、このジェイさんも、イヌやウマ、トリやネズミに加えた登場キャラクターだと思う。
和泉さんと彼の関係が、女王と下僕のように見える…不思議な事に、彼がそれに納得して下僕をやっているようにも見える。
癖のあるキャラクター(動物たちの癖の強さといったら!)たちの中でも癒し系と言えるだろう。
自称、どこかの谷に住んでいる妖精や、蜂蜜大好きのお腹ポッチャリ黄色い熊だそうな。
カクヨムに挿絵機能が付いたら、是非彼の写真もアップして欲しいところだ。
(他の方たちが素敵な動物エッセイとしてのレビューを書かれていたので、私は違う面から書いてみました)