今はまだ凪、一瞬の風景。

 「万人とは異なる所があっても許容しよう、共に生きよう」というお題目を唱えるのは簡単ですが、実際に実行するとなると個人の価値観が抉られて、うまくいかないのが世の常です。
 
 ここのところ「発達障害」という言葉が注目を集めています。これは法改正や診断基準の変更に伴う一連の流れの中での盛り上がりにすぎず、文明が生まれてから幾星霜、そのような人たちは一定数存在してきました。そして、この物語にあるような夫婦が、親子が、いつの時代もいたのです。
 
 物語に登場する夫婦には、これから先、さらなる苦労がまっているでしょう。本人にも、言わずもがな。そのような未来が容易に想像できる設定のなかで、幸せな一瞬を切り取った文章です。そして何より、タイトルが素晴らしかったです。

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