地上に広がる新たな勢力図。傭兵は逃げ、騎士は集い、盟約が蠢き始める!

遠い未来、大地は紫色の毒ガスに覆われ、文明は失われた。
わずかな高地に逃れた人々は、前時代の遺産に縋りながら、
中近世のような暮らしを営み、利を巡って争いを繰り返す。
そのディストピアの歴史に今、転機が訪れようとしていた。

優等人種を自任するスピリチュアルは地上の制覇を目指し、
いわゆる一般人のフィジカルとの戦争を繰り広げてきた。
そして現皇帝の軍事力によって制覇がほぼ成し遂げられるや、
スピリチュアルの帝国は地上に貴族制を敷いて統治を始める。

[胎動篇][生誕篇]では皇女カナリエルの逃亡劇が描かれた。
この[揺籃篇]は物語の舞台が大きく広がり、風合いが変わる。
貴族制の施行によって勢力図は塗り替えられ、それに乗じ、
帝国の基盤そのものを揺るがす「盟約」が姿を見せ始める。

傭兵の旅、騎士や貴族の暮らし、都市やその地下の情景など、
登場人物たちが体験するその世界の様子はリアルに描かれ、
読者はページを送る毎に彼らの世界を追体験することができる。
骨太に創造された物語を紐解く手応えはまさに読書の醍醐味だ。

少女マチウがやっと動き出した!
前作まではカプセルの中で誕生を待ち続けていた彼女が、
今作ではオヤジであるゴドフロアの籠から飛び出して、
フィジカルの大人たちには到底できない活躍をしてみせる。

聡明で元気な少女といえば『地球獣ボコイ』のコトコも
大人顔負けの胆力と活躍を見せてくれて微笑ましいが、
コトコの保護者リョーマが風任せで勢い任せなのに対し、
マチウの保護者ゴドフロアは傭兵のリーダーで頼もしい。

(勿論、リョーマもいい味を出しているんだけれども、
 無愛想なようでめちゃくちゃ気配り屋のゴドフロアが
 何だか物凄く好きで、筋肉ダルマだけどカッコよくて、
 たまにフッと柔らかい表情を見せる感じが良いのです)

完全無欠の印象だったロッシュは少し雰囲気が変わった。
カナリエル逃亡の一件を受け、どこかしなやかになった、
ような気がするけれども、これから一体どうなるのか。
マチウとゴドフロアの追跡は、どんな決着を見せるのか。

続きが更新されるのをじっくりとお待ちしています。

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